英国で6日、70年ぶりに国王の戴冠(たいかん)式がある。前回の英エリザベス女王の戴冠式には、上皇さまが学習院大在学中の19歳の皇太子時代に、昭和天皇の名代として参列した。上皇さまにとって初の外国訪問となった戴冠式参列のための欧米歴訪は、戦後の皇室の国際親善の始まりでもあった。
外国王室などとの交流の場に 「日本を考えさせる契機となった」
1953年6月、ロンドン市内のウェストミンスター寺院。エリザベス女王の頭上に王冠が載せられる瞬間、外国元首らに交じって最前列にいた上皇さまは、伸び上がるようにしてその様子を見守った。
当時式部官として同行した吉川重国氏の家信を編集した「戴冠紀行」によると、上皇さまは戴冠式を最前列で見守り、さらにレセプションなどでは女王や英王室、さらには外国代表や王族の方々と交流した。
英国には約1カ月間滞在。戦争の記憶が残る時期に、かつての敵国からのプリンスに冷ややかな見方もあったが、英王室のサポートもあって次第に好意的な世論が広がっていった。
英国を含む計15カ国を巡って各国の王室などと交流した上皇さまは、在位中の93年の記者会見で、「私に世界の中における日本を考えさせる契機となりました」。そう当時を振り返った。
戦後、戴冠式や即位式への参列は過去6回
戦後、皇室の方々が参列した戴冠式や即位式は6回。エリザベス女王の戴冠式のほか、75年には皇太子時代の上皇さまと美智子さまがネパール国王の戴冠式に、80年には三笠宮ご夫妻がオランダ女王の即位式に、2008年には皇太子時代の天皇陛下がトンガ国王ツポウ5世の戴冠式に、皇太子時代の天皇陛下と雅子さまが13年にオランダ国王の即位式、15年にトンガ国王ツポウ6世の戴冠式にそれぞれ参列した。
戴冠式では参列した各国の元首や王族らと交流する場にもなる。
また、国際儀礼(プロトコル)に基づいて席次などが決まるのが一般的で、エリザベス女王の戴冠式に参列した上皇さまが皇太子にもかかわらず最前列だったのは、「昭和天皇の名代だったからでは」(宮内庁担当者)とみられている。
秋篠宮ご夫妻、国王と再会へ 英王室とより強い絆を
秋篠宮ご夫妻が外国の戴冠式に参列するのは初めてだが、皇室と英王室は明治から約150年の交流があり、秋篠宮さまはこれまでに皇太子時代のチャールズ国王と4回対面している。
戦後の皇室の国際親善が始まってから70年ぶりとなる戴冠式で、ご夫妻が紡ぐ新たな国際親善に、宮内庁幹部は「皇室と英王室の絆をより強くして頂ければ」と期待する。(多田晃子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル