石垣明真
元同僚の女性教諭(当時47)を殺害し、遺体を遺棄したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた元帯広農業高校教諭の片桐朱璃被告(36)について、札幌高裁(成川洋司裁判長)は11日、「一審判決は、多角的視点を欠いて結論を導き出しており、不合理だ」などとして、承諾殺人罪を認定した一審・釧路地裁判決を破棄し、審理を地裁に差し戻した。
一審判決によると、片桐被告は2022年5月30日、帯広市内の駐車場にとめた車の後部席で、女性の首をシートベルトで絞めて殺害。同日夜に市内の雑木林に遺体を埋めた。
一審判決では、殺害直前に片桐被告が「もう死ぬしかない」と持ちかけ、女性が2度うなずいた点について、「(女性の)承諾は、被告が一緒に死ぬことを前提にしていた疑いがある」とした。
一方、殺害は片方しか死ぬことができない方法で行われていて、女性はそのことに気付く機会があったと認定。女性は首を絞められる際に抵抗しなかったことなどから、「自分のみが死ぬことを容認した上で、殺されることを承諾していた疑いを生じさせ、被告が共に死ぬことが必須の前提条件になっていたと認めるに足りない」とした。そのうえで、片桐被告が女性と一緒に死ぬつもりはなかったと認められるが、承諾殺人罪が成立すると結論づけていた。
これに対し、高裁判決は「(女性は)尋常ではない心理状態の下で衝動的に死ぬことを決意した」などと指摘し、心中する方法の不自然さに気づいていたとは言いがたいとした。また、女性が抵抗しなかったとしても、「単に抵抗する暇もなく意識が消失したとみるのが自然だ」ともした。
女性が2人の関係が続くことを強く望んでいた経緯なども含めると、「被告が共に死ぬことが、女性が自らの死を容認する必須の条件だったというべきだ」とも指摘。一審判決は「女性が置かれていた状況や心理状態などの考慮すべき事項を検討することなく結論を導き出した」とした。そのうえで、殺人罪の適用を前提とした量刑の議論が不十分なため、地裁で審理を尽くす必要があるとした。(石垣明真)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル