幼いころから使い慣れた「日本手話」で授業を受けられず、憲法で保障された「ひとしく教育を受ける権利」を侵害されたとして、北海道札幌聾(ろう)学校(札幌市)の小学6年の女児(12)が道を相手取り、慰謝料など550万円を求めて札幌地裁に提訴した。同校をめぐる同様の訴訟は2件目。会見した女児の両親は「子どもが自分らしく成長できる教育環境を実現してほしい」と語った。
訴状によると、女児は生まれつき聴覚障害があり、「日本手話」で育った。同校では日本手話で学べるクラスに在籍していたが、5年生の途中で日本手話ができる担任が休職し、日本手話による授業が受けられなくなったストレスから登校できなくなった。
6年生の春からオンラインで授業に出るようになったが、新しい担任は日本手話をほとんど使えず、女児が理解しづらい「日本語対応手話」で指導を受けるようになった。女児は意思疎通がとれない苦痛から授業を受けられなくなったという。
女児の父親(41)は提訴後に会見し、「授業がわからず、周囲の会話についていけなくなった。孤独を感じ、自己肯定感を失い、精神的に追い込まれた。私たちは娘を休ませざるを得ないと判断した」と説明した。5年生の3学期の通知表の欠席理由には「事故欠(家庭の都合)」と記されており、変更を求めると「保護者判断により登校を中止」とされたという。
母親(41)は「日本手話で先生に何回も発言しても、言いたいことが伝わらない。楽しく学びたいのに、教室の雰囲気が重く、精神的な限界で泣き出すことがあった」と振り返った。女児は「それぞれの子どもにあう教育指導をしてほしいのが一番の願い」と話しているという。
日本手話は主にろう者同士で使われ、手だけでなく顔や体の動きも文法的な意味をなす。語順が日本語と異なる場合もある。一方、日本語対応手話は日本語の文法に合わせて単語ごとに手の動きを当てはめ、助詞を口の動きや指文字で補う。
同校をめぐっては昨年7月、小学3年の男児が日本手話で授業が受けられていないとして提訴した。
提訴を受け、北海道教育委員会は「訴状が届いていないためコメントは差し控える」としている。(角拓哉)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル