米国で日本人男性と法的に結婚した米国籍の男性が、配偶者であることを前提にした在留資格を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁(市原義孝裁判長)であった。判決は、外国人同士の同性婚なら配偶者に「特定活動」の資格を与えているのに、日本人の外国人配偶者には与えない国の運用は「憲法の平等原則の趣旨に反する」と指摘し、「特定活動の資格を認めるべきだった」と判断した。
国の運用の違憲性を指摘した司法判断は初めてとみられる。一方、特定活動より永住資格に移行しやすい「定住者」資格などを求めた原告の訴えは却下した。
原告はアンドリュー・ハイさんとパートナーの康平さん(姓は非公表)。
国は2013年、海外で結婚した外国人同士の同性カップルは、一方に日本での有効な在留資格があれば、他方に特定活動の資格を与えるという通知を出した。一方、日本人と海外で結婚した外国人の同性配偶者は、対象外としてきた。
判決はこの運用について「外国人同士の同性婚の配偶者と比較して劣位に置くもので、合理的な根拠があるとは言えず、法の下の平等を定めた憲法14条の趣旨に反する」と述べた。
その上で、米国で法的に結婚している2人の婚姻関係は「一定程度保護する必要があり、特定活動への変更を認めるべきだった」と判断した。
ハイさんらは、異性の夫婦なら「日本人の配偶者等」の資格が得られることから、同等の扱いとして「定住者」資格を求めていた。しかし判決は「日本では同性婚を認める法規定がなく、配偶者と同視はできない」とした。
2人は在留資格の変更を許可しない違法な処分を受けたとして、計1100万円の国家賠償も求めていた。判決は、ハイさんに特定活動の資格を与えなかった入管の対応は「客観的には違法」としつつ、入管の運用に疑義を呈する司法判断などはなく、過失があったとまではいえないとして退けた。
2人は康平さんが米国留学中の04年に出会った。康平さんの帰国後、ハイさんは留学の形で来日。さらに日本で起業し、14年以降は「投資・経営」の在留資格を得た。米国の連邦最高裁が同性婚を認めた15年、米国で結婚を届け出た。
その後、会社の経営が傾き、資格更新が難しくなった。18年以降は、特別な理由を考慮して居住が認められる「定住者」資格などへの変更を申請したが、不許可とされてきた。(田中恭太)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル