暴力団を初めて「反社会的集団」と法的に位置づけた暴力団対策法の施行から、今年で30年となった。暴力団勢力が減り続ける一方で潜在化が進み、実態をつかみにくい半グレ集団も現れるなど、課題はなお少なくない。
禁止命令、5万件超
暴対法の制定は、バブル崩壊の時期と重なる。
この前後、暴力団は不動産や証券取引に手を延ばし、地価の高騰を背景にした地上げや債権回収といった民事介入暴力で利益を得ていた。捜査当局は、覚醒剤密売や賭博といった違法行為だけでなく、こうした法的に「グレー」な事案への対応を迫られた。
暴対法では、暴力団の威力を利用して組員に資金を稼がせる、犯罪歴がある人が一定以上所属する、といった要件を満たせば都道府県の公安委員会が「指定暴力団」に指定する。指定されると組員の活動は大きく制限されることになった。
法が定める「禁止行為」があれば、警察が組員らに中止命令を出し、従わなければ摘発できるようにもなった。禁止行為には「みかじめ料の要求」などがあり、一昨年までに全国の警察が出した中止命令は5万件超に上る。
活動の実態に応じ、法改正も続いている。
2004年と08年には組員の暴力行為や資金獲得行為に関し、トップが損害賠償の責任を負う規定を追加。九州で指定暴力団同士の対立抗争や指定暴力団が一般市民を襲撃する事件が相次いだことを受け、12年には組織への規制をより厳しくする「特定抗争指定暴力団」「特定危険指定暴力団」の制度もできた。
暴排条例、全都道府県に
07年に政府が策定した「反社会的勢力による被害を防止するための指針」に沿って企業が暴力団に対応するようになり、暴力団関係者による取引はいっそう難しくなった。市民側にも暴力団との関係を断つよう求めたのが、暴力団排除条例だ。11年には全都道府県で制定された。
一連の「包囲網」によって、1991年に9万人以上だった暴力団勢力(組員や準構成員)は、21年末時点で2万4100人まで減った。
組員による特殊詐欺事件で暴力団トップの責任が問われるケースも相次いでいる。被害者がトップを相手取り損害賠償を求める訴訟を各地で起こし、賠償責任を認める判決や、暴力団側が責任を認めて和解する例もある。昨年3月には、指定暴力団住吉会の会長らの代表者責任を認める判決が最高裁で確定した。
表の活動が細る中、組員の「潜在化」もささやかれている。
組員が身分を隠したり、組織を抜けたように見せかけたりする手法もあり、ある組幹部は「うちには警察が把握している人数の5倍以上はいる」と打ち明ける。法施行前から20年以上暴力団捜査に携わった元捜査員は「昔は構成員の数でメンツを保っていたのに、組員であることを隠すようになった。暴力団が生きにくい世界になったのは事実だが、実態も見えづらくなっている」と話す。
10年ごろからは暴走族・関東連合のOB集団をはじめとする「半グレ」による犯罪が目立ち始めた。暴対法による規制対象外で、「アメーバのような存在」(警察幹部)。警察当局は「準暴力団」と位置づけ、実態把握を進めている。
暴力団トップに死刑判決も
暴力団をめぐっては近年、全…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル