暴力団を「反社会的集団」と法的に位置づけた暴力団対策法が施行されて、今年で30年。かつて20万人近くいたとされる暴力団員は、この30年で3万人以下(準構成員らを含む)にまで減りました。「暴力排除」は順調に進んでいるように見えますが、新たな問題も浮上しているといいます。本当に必要な暴力団対策とは何か。暴力団員から直接話を聞き取るなど異色の調査を続ける犯罪社会学者・広末登さん(52)に、暴対法30年の成果と課題を聞きました。
――暴力団についての異色の研究が注目されています。どのような研究をしているのですか。
20年近く、現役の組員や元組員たちに直接インタビューし、暴力団という社会がなぜ存在するのかについて社会学的に調べています。
具体的には、暴力団事務所に電話や手紙で取材を申し込んだり、元ヤクザが運営する教会に住み込んだり。事務所を訪ね歩き、店でお酒を酌み交わしながら組員や元組員たち、延べ200人近くから半生を聞き取ってきました。
――なぜ暴力団の研究をしようと。
自分の経験を生かせると考えたからです。
私自身、経済的に苦しい家庭に育ちました。父親にいつも殴られ、学校にろくに通わせてもらえず、中学時代は他校の生徒とけんかしたり、プールの陰でたばこを吸ったり。不良の世界にどっぷりつかった非行少年でした。
中学3年の夏、バイクで暴走して補導されたとき、警察署で手錠をかけられ、泣きじゃくるリーゼントの不良の姿を見ました。それを見て、自分は潮時だと思ったんです。
一線を越えてヤクザになってしまう人たち
でも、やり直そうと思っても世の中は簡単ではありませんでした。
自ら「グレた少年だった」と振り返る広末さん。一度ドロップアウトすると、立ち直りたくても難しい社会の現実を体験し、「ヤクザ」を生んでしまう社会構造について研究を始めたそうです。なぜ「ヤクザ」が減っても、新たな問題が生まれるのか。後半では、30年にわたる暴力団対策の「成果」と、それによってもたらされた新たな「危険」について解説しています。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル