渡辺元史
奈良県職員の西田幹(つよし)さん(当時35)がうつ病を発症して自殺したのは県に責任があるとして、遺族が県を相手取り1億200万円の損害賠償を求めた裁判の判決が31日、奈良地裁であった。寺本佳子裁判長は県の責任を認め、遺族に6810万円の賠償を命じた。
判決によると、西田さんは2014年4月に県教委教職員課に配属されたが、7月末ごろには上司に「しんどい」とこぼし、異動を願い出た。しかし、希望はかなわず、15年3月ごろにうつ病を発症。当時は1カ月間の残業時間が150時間に及んでいた。
16年4月に県の別の課に異動した後も、80時間を超える残業が続いた。西田さんと面談した産業医も就業場所の変更などを指摘したが、当時の上司は早めの帰宅を呼びかけるなどにとどめていた。西田さんは17年5月に自宅で自殺した。
判決は、西田さんが過酷な勤務状況に置かれていたことを指摘。うつ病発症後も恒常的な長時間労働が続き、心身の負担が自殺の原因と認めた。うつ病だった西田さんの自殺は予見可能だったとし、具体的に業務量を削減するなどしなかった県の対応は安全配慮義務違反にあたるとした。
遺族側「勤務管理のあり方、問題投げかける事件」
判決後、西田さんの父・裕一さんと母・隆子さんが会見した。裕一さんは「(西田さんに)お前の敵(かたき)は取ってやったと伝えたい」と話し、「遺族が何度言っても過労自殺がなくならない」と訴えた。原告側の松丸正弁護士は「勤務時間の適正把握と管理のあり方全体に問題を投げかける事件だと思う」と述べた。
荒井正吾知事は「判決内容を十分精査した上で、今後の対応を検討したい」とのコメントを発表した。(渡辺元史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル