本人の姿は、法廷になかった。一度は死刑判決が確定した袴田巌さん(87)のため、姉の秀子さん(90)が出廷した。逮捕から2万889日。無罪を信じ、家族や支援者が願い続けた巌さんの裁判の「やり直し」が始まった。
「再審公判の審理を開始します。被告人は袴田巌さん」
国井恒志裁判長は初公判の冒頭に述べ、その後は被告とは言わず、「袴田さん」と呼んだ。「自己の置かれている立場を理解できず、黙秘権を理解することは甚だ困難である」と述べ、出廷を免除した理由を説明した。
秀子さんと弁護人ら計18人の弁護側に対し、検察側は3人で法廷に臨んだ。検察官が起訴状を読み上げる姿を、秀子さんはじっと見つめていた。
「秀子さんの陳述を伺う」
裁判長に促され、秀子さんは証言台の前へ。紙を持ち、時折声を震わせながら述べた。
「1966年11月15日…
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