厚生労働省の主催で28日夜に開かれるエイズ啓発イベント「レッドリボンライブ」をめぐり、予定していたアダルトビデオ(AV)監督の村西とおるさんの出演を、厚労省が取りやめた。村西さんの出演が発表された後、過去に女性差別発言があったなどとして、性暴力の問題に取り組む団体が厚労省に質問状を出すなどしていた。
レッドリボンライブは12月1日の「世界エイズデー」を前に開かれるイベントで、今年が14回目。医療関係者やタレントらによるHIVやエイズに関するトークやライブを通じ、正しい知識を得てもらおうという狙いがある。
同省エイズ対策推進室が今月1日に発表した出演予定者には、元アナウンサーの小林麻耶さんや元AV女優の蒼井そらさんらとともに、村西さんの名前が挙がっていた。
これに対し、村西さんが「過去に女性差別発言を繰り返している」とする批判がネット上であった。AV出演の強要など性的搾取や性暴力などの問題に取り組むNPO法人「ポルノ被害と性暴力を考える会」は20日、村西さんの出演に疑義を唱える質問状を厚労省に出していた。
厚労省エイズ対策推進室の担当者が28日、村西さんを起用した理由について、朝日新聞の取材に答えた。
担当者は「HIVは早期発見や予防が重要で、性産業界から感染リスクなどについて発信していただく意義があると考えた。一般層にも広く知ってもらうため、村西さんの知名度や発信力に期待した」と説明した。もともとは運営を委託したイベント会社からの提案で、村西さんはイベントの趣旨を理解した上で出演を承諾していたという。
ところが、26日に発表した出演者の中に村西さんの名前はなかった。
イベントの直前になって取りやめを決めた理由について、担当者は「不適切だという意見がある中で村西さんの出演の適否に焦点が当たるのは、イベントの趣旨に合わないと考え、ご本人と相談の上で決定した」と話した。
村西さんは、動画配信サイト・ネットフリックスでこの夏に配信されたオリジナルドラマ「全裸監督」で、主人公のモデルとなった。バブル景気にわいた1980年代の日本社会を舞台に村西さんの半生を描き、国内外で視聴者を集めた。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル