編集委員・大村美香
13年前、エッセイストの檀晴子さん(79)は、住み慣れた東京の自宅を引き払い、義父が人生最期の時を過ごした福岡市の能古島(のこのしま)に引っ越しました。「半農半X」を目指し、あこがれの菜園生活を始めたものの、現実は甘くなくて。それでも「エッと驚くおいしさのご褒美」があり、畑に魅せられています。
東京を離れるとは思ってもみなかった。ところが道路計画のために立ち退きを迫られ、映像プロデューサー・エッセイストの夫、太郎さん(79)と、思い切って移住することにした。
博多湾に浮かぶ能古島は、太郎さんの父、作家の檀一雄さんが晩年にくらしたところ。人口約650人、スーパーやコンビニはない。ただ、対岸とは乗船時間10分のフェリーで結ばれ、市中心部にも気軽に出られる。
海を見下ろす南側の斜面に義父の旧宅があり、建て直した。そばの梅林を数本残して切り払い、整地し堆肥(たいひ)をまいてもらって、畑の予定地にした。
晴子さんは東京生まれの東京育ち。土いじりは好きで、東京でもプランターなどで花や野菜を少し育ててはいた。菜園生活に備え、練馬区の農業体験農園で3年間野菜作りを学んだ。
一通りできるようになったつ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル