広島への原爆投下から74年となった6日、広島市中区の広島平和記念公園で平和記念式典が開かれた。雨の中、約5万人の市民らが参列。原爆投下時刻の午前8時15分に、犠牲者に黙禱(もくとう)を捧げた。
冷戦終結の象徴となった米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約が2日に失効したばかり。式典の「平和宣言」で松井一実市長は、「両核大国の間で『理性』の発露と対話によって核軍縮に舵(かじ)を切った勇気ある先輩がいたことを思い起こして」と問いかけた。広島県の湯崎英彦知事は「核兵器不使用を絶対的に保証するのは、廃絶以外ありえない」と断じた。
核兵器をめぐっては、使用するとの威嚇などを禁じた核兵器禁止条約が、非保有の南半球の国々を中心とした122カ国の賛同で2年前に国連で採択された。しかし批准した国は24で、発効に必要な50に満たない。松井市長はこの日、日本政府に署名・批准を促し、「核兵器のない世界の実現に更に一歩踏み込んでリーダーシップを発揮して頂きたい」と求めたが、安倍晋三首相はあいさつで条約に言及しなかった。
保有国に核軍縮交渉を義務づけ、他の国々には保有を禁じた核不拡散条約(NPT)が、被爆75年となる来年に発効から50年となる。これに先立ち、ニューヨークの国連本部で今春に会合が開かれたが、核軍縮の進め方をめぐる対立を露呈した。
こうした状況の中、国連のアントニオ・グテーレス事務総長のメッセージが式典で代読された。「私たちは国際安全保障環境の悪化を目の当たりにしている」と述べ、「核保有国間の緊張が高まっている。もう一度被爆者が広めてきたメッセージを思い出さなくてはならない」と訴えた。(宮崎園子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル