所得増も農家減少 目標値なお隔たり
4日公示・21日投開票の参院選は、農業の成長産業化に向けて多分野で改革を進めた6年半の「安倍農政」の是非も問われる。安倍晋三首相は生産農業所得や農産物輸出額の増加を成果とするが、生産基盤の弱体化は止められず、政府が掲げた成果目標の進捗(しんちょく)状況は芳しくない。農業がこの間どう動いたか、農水省の統計から検証した。
首相は2012年12月の第2次内閣発足後、13年6月に(1)農業・農村全体の所得を倍増(2)農林水産物・食品の輸出額1兆円(3)全農地の8割を担い手に集約──などを目標とする成長戦略を閣議決定。実現に向け、矢継ぎ早に農政改革を進めた。
農業総産出額や、農家の所得に当たる生産農業所得は政権発足前の12年に比べ、直近の調査の17年はいずれも伸びた。首相は通常国会閉会後の6月26日の会見で「生産農業所得はこの19年間で最も高い水準」と誇った。だが、伸びをけん引した畜産や野菜の産出額の増加の背景には、肉用牛の飼養頭数の減少など、生産基盤の弱体化による供給力の低下と、それに伴う価格上昇がある。手放しでは喜べない。
カロリーベースの食料自給率は16年度から38%に低下し、6年間で農業就業人口は3割、主な仕事が農業の「基幹的農業従事者」も2割減った。首相は26日の会見で、49歳以下の若手新規就農者が「統計開始以来、初めて4年連続で2万人を超えた」と強調したが、全体の新規就農者数は毎年5万~6万人で、離農者数に追い付かない。荒廃農地の面積も拡大が続いている。
加えて、首相が政権の成果とするのが、農林水産物・食品の輸出額だ。6年連続で増え、18年には9068億円になった。19年に1兆円という目標に近付いてはいるが、主力品目は水産物や加工食品が多い。首相自身が国会で、「農家の手取りが増えるような輸出を心掛けたい」と述べている。農家所得の向上には直結していないとの指摘がある。
輸出以外の政府目標は、いずれも達成までの道のりが険しい。14年に農地中間管理機構(農地集積バンク)を創設し、担い手が利用する農地の割合は5割を超えたが、伸び率は年平均1ポイント程度で伸び悩む。法人経営体数は6割増となったが、達成には残り5年間で倍増が必要となる。11年の全国平均比で4割削減するとした担い手の米生産費は、年によって増減を繰り返している。
米価は12年産の水準には届かないが、飼料用米の拡大による生産調整の達成が奏功し、60キロ当たり1万1967円だった14年産からは大きく回復した。だが、政府が生産数量目標の配分を廃止した18年産は、飼料用米の生産量が前年を下回り、主食用米の作付けが増えた。一方、米の消費量減少を受け、主食用米の適正生産量は7年間で1割近く減った。今後、需給安定に向けた取り組みは一層難しくなる恐れがある。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース