「こんにちは、機内での暇つぶしにどうぞ!(Hi, this is in-flight entertainment!)」
通路側に目をやると、1人の男性がほほえみながらチャックつきの透明な小袋を配っていた。
英語はあまりよく聞き取れなかったけど、何だか楽しそうな雰囲気は伝わってきた。
5月8日、北米旅行を終えた札幌市の明里さん(22)が乗り込んだ東京行きの飛行機。
もうすぐすると、カナダのバンクーバー空港を飛び立つ。
スチームクロック(蒸気時計)が映えるバンクーバーの街並みに、フロリダのディズニーランド――。
人生初の海外は思う存分楽しめたけど、時差ぼけで体はだるく、10時間超のフライトはちょっと憂鬱(ゆううつ)だった。
さて、何の映画を見て乗り切ろうか。
そう考えていた時のことだった。
男性が自分のところにやってきた。
「怪しい人には見えないけど、何を配っているのかな?」
みんなが笑顔で受け取っていたので、自分もひとまずもらってみた。
「あ、そういえば……」
男性の顔を見て、明里さんは、搭乗口前で子どもと並んで歩いていた人物だったことを思い出した。
手紙を翻訳したら
手に取った袋を見てみた。
金色の紙に包まれたキャンディーと赤い耳栓。
そして、英文がつづられた小さな紙きれが二つ折りで入っていた。何かの手紙のようだ。
明里さんは、観光中に頼りっきりだったスマホのアプリで英文を翻訳してみた。
手紙の送り主は、意外な人物だった。
《こんにちは。ぼくたちはリ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル