現場へ! 新しいアナーキスト③
五所純子(42)は、アナーキストを自称していない。しかし「アナーキストよりアナーキストらしい」と周囲に評される。文筆家であり、美術展でも活動する。
昨年出版された「薬を食う女たち」では、覚醒剤や睡眠薬など薬物使用にはまった女性たちの内面に迫った。クラブダンサー、派遣型売春ビジネスをたちあげた創業者、中学生で性犯罪の被害にあった知的障害者ら、女性たちが、ルポとも小説ともつかない文体で体験を語る。
「1980年代に、『覚醒剤やめますか? それとも人間やめますか?』という広告があった。標語を作る側には“正しい人間”像があったんでしょう。でも取材してわかったのは、覚醒剤をやったからといって、簡単に人間はやめられないこと」
クスリをやる側にも、その世界での正しい人間像はあった。義理人情や仲間うちの掟(おきて)。
「現実からの飛躍が欲しくて薬に手を出す。でもそれはアートや文学、音楽、政治運動だって同じ。正しい人間像を揺さぶるもの。アナーキストとは『正しい人間像に疑問をもち、思索を続ける人』であるならば、わたしもそうでありたい」
アナーキズムとは、標語や“正しさ”を壊すこと。自分が居ていい場所を作ること。
「彼女らは自分を薬漬けにした男を裏切らない。恋愛感情があるから。わたしはそんな支配関係をおかしいと思うが否定もしない。自問自答する。疑問がある以上、人は死ねないから」
あらゆる支配を否定するアナ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル