小児看護専門看護師 萩原綾子さん
私が脊髄(せきずい)性筋萎縮症(SMA)のアリスちゃんと家族に会ったのは、2007年夏のことです。院内で議論を重ね、気管切開せずに退院することが決まり、退院前カンファレンス(会議)でごあいさつをしました。
3歳3カ月だった同年10月にアリスちゃんは退院しました。リスクの高い状態での退院だったので、訪問診療する在宅医や訪問看護師らとの意思統一もしっかり図っておかないといけません。そのために退院する前、関係者が集まった会議「退院前カンファレンス」を開くのが常です。
子どもの在宅療養は、高齢者のそれとは若干違います。在宅療養は、難しい言葉でいうと「地域包括ケアシステム」という仕組みのなかで運営されています。在宅医や訪問看護師、介護系サービスなどと連携しながら、地域の中で穏やかに亡くなっていくシステムです。高齢者の場合は、ケアマネジャーが全体を差配し、現在は子どもの場合は相談支援専門員や医療的ケアコーディネーターの育成を国が進めています。しかし07年当時の子どもの場合、ケアマネジャーがいませんでした。そのため、病院の地域医療連携室などがコーディネーターとして初動することがほとんどでした。
退院前カンファレンスには…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル