国内の水族館で、ラッコが見られなくなる可能性が高まっている。飼育頭数は1990年代に120頭を超えたが、30年で激減し、首都圏の水族館からは姿を消した。残るは福岡県と三重県の2施設で飼育される3頭のみ。「今のうちに」と全国から来場者が訪れている。
日本動物園水族館協会(東京)によると、水族館のラッコ飼育は1982年に伊豆・三津シーパラダイスで始まった。首都圏では84年に初めてサンシャイン水族館(東京)で飼育開始。景気の良かった80~90年代、大都市臨海部の再開発で神戸市立須磨海浜水族園(87年)や大阪・海遊館(90年)、横浜・八景島シーパラダイス(93年)などの大型水族館が各地で開園。イルカショーなどと並ぶ目玉の一つが、ラッコだった。
ピーク時の94年は122頭に上った。だが、毛皮目的の乱獲などで個体数が減り、ワシントン条約で国際取引が厳しく規制。米国からは98年、ロシアからは2003年を最後に輸入が途絶えた。00年には国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定。00年には88頭がいたが、11年に30頭、17年に10頭と急速に減った。首都圏では、18年にアクアワールド茨城県大洗水族館の個体が死に、姿を消した。
国内での繁殖は成功例もあったが、長く生きられない個体が多かった。マリンワールド海の中道(福岡市)では、過去に計9頭の赤ちゃんが生まれたが、6頭は数週間~1年ほどで死んでしまった。継続的な繁殖は難しく、代を重ねるごとに繁殖能力が落ちるという。
残る3頭は鳥羽水族館(三重県)のメスの15歳のキラと18歳のメイ、マリンワールド海の中道のオスの16歳のリロ。飼育下では米国の水族館で28歳まで生きた記録もあるが、野生のラッコの寿命はオスは10~15歳、メスは15~20歳と推定される。国内の3頭は人間なら「高齢者」の域に達しつつあり、繁殖は極めて難しい。
ラッコ写真集1分で完売、誕生祭に500人 人気沸騰の理由は
そんな中で高まるラッコ人気。鳥羽水族館が昨春、展示するメイとキラの写真集を発売した際はアクセスが殺到し、500冊が約1分で完売。増刷を重ね、約半年で7千冊が売れた。昨年末からは、来場者があふれる週末や休日の「ラッコのお食事タイム」で、水槽前のスペースに立ち止まって観覧できないようにする運用を始めた。
水族館の職員らは人気沸騰の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル