池田良
東日本大震災が発生してから12年。被災地は復興が進み、避難指示が出ていた地域にも住民が戻り始めました。しかし、その活気やにぎわいは、地域によって濃淡があります。子どもが増えている宮城県名取市の閖上の状況を探りました。
宮城県名取市閖上(ゆりあげ)の公民館で1月下旬、子育て世代を対象にした交流会があった。乳幼児を連れた女性8人が、子育ての悩みや街での暮らしぶりについて意見を交わした。
主婦佐藤友香(ともか)さん(33)は、次女の茉音莉(まおり)ちゃん(2)と初めて参加した。夫と子ども2人との4人暮らし。2020年5月に仙台市から引っ越してきた。地価が倍近くになった仙台市の主要部に比べ、閖上はまだまだ手頃。名取川が太平洋に注ぐ景色も気に入った。
閖上は震災時、津波に襲われ、市全体の死者の4分の3を超す700人以上が犠牲になった。だが、20年秋に土地区画整理事業が完成。土地をかさ上げして復興公営住宅や建て売りの戸建てができると、子育て世代が次々と移り住むようになった。
1月末現在の地区の住民は1398世帯3091人。14歳以下の人口は20年に約14%まで増え、市が統計を取り始めた14年の7・53%から急増。宮城県全体の11・7%や全国の11・9%を上回る。
佐藤さんの長女咲來(さら)さん(9)が通う小学校では毎年、地震を想定した保護者参加の防災訓練が開かれている。転居後に大きな地震があり、津波警報も出た。家族で話し合いを重ね、今は災害時の行動や避難先を決めている。佐藤さんは「閖上は子育て世代がたくさんいて住みやすい。完全に安全な場所はどこにもない。閖上は被災の経験がある分、最新の防災が詰まっている」と話す。
子育て交流会は、新旧住民の親睦を図ろうと昨年から始まった。主催した閖上中央町内会長の長沼俊幸さん(60)は「街にどれだけの人が戻ってくるのか不安だったが、若い人が来てくれて新しい街としてスタートした。新しい人たちとの付き合いを深め、顔が見える仲を築きたい」と語った。(池田良)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル