漁船の捕る魚を「拾い食い」するザトウクジラの撮影に、神戸大大学院の岩田高志助教(40)=動物生態学=を中心とする研究チームが成功した。
研究成果が11月、国際学術誌のデジタル版に掲載され、岩田さんは「ザトウクジラが拾い食いをする映像を捉え、発表したのは世界初」と話している。
岩田さんによると、ザトウクジラは日本近海など世界中に生息する。おとなの体長は約15メートル、体重約40トンに上る大型のクジラで、通常は小魚やプランクトンの群れに突進する方法で餌を捕らえるという。
研究チームは2017年1月、ザトウクジラが現れやすいノルウェー北部の沿岸で調査を実施した。
沿岸を泳いでいたメス3頭の背中に、泳ぐ速さや潜る深さを記録できる装置や小型カメラを吸盤で取り付けた。装置は十数時間後には自然にはがれて海面に浮かび、発信機の電波を頼りに回収した。
岩田さんが解析した結果、3頭のうち1頭が約43分間にわたって漁船の周りにとどまり、漁師が網を揚げる際に海中へこぼれ落ちるニシンやタラを、水中で拾い食いしていたことがわかったという。
本来はクジラの天敵であるシャチも、一緒に漁船の周りで拾い食いをしていた。
漁船からこぼれ落ちる魚を狙って、イルカやアザラシ、海鳥が集まることはこれまで知られていたが、ザトウクジラは初めてだという。
岩田さんは「楽に餌を捕らえられるため、ザトウクジラも漁船の周りにやってきたとみられる」。
ただしクジラの体の大きさに比べれば、食べられる魚の量が少なく、「おやつ感覚で食べていたのではないか」と推測する。
ロープや網などの漁具がクジラに絡まる危険性もあり、「クジラが嫌がる音を出して漁船に近づけさせない対策も必要だ」と岩田さんは指摘している。(森直由)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル