日本年金機構(東京)が年金加入者に送る「ねんきん定期便」などの入札をめぐる談合事件で、公正取引委員会は3日、大手印刷業者など26社の独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定し、25社に排除措置命令、24社に計17億4161万円の課徴金納付命令を出したと発表した。談合情報が寄せられていたのに通報をしていなかったとして、機構にも改善を求めた。
談合していたのは、東洋紙業(大阪)、ナカバヤシ(同)、共同印刷(東京)、凸版印刷傘下のトッパン・フォームズ(同)、北越パッケージ(同)など。遅くとも2016年5月から、ねんきん定期便や年金振り込み通知書など機構が発注する22種類の印刷・発送準備業務の入札などで談合した。課徴金の算定根拠となった各社の売り上げは計約183億3824万円だった。公取委は19年10月に立ち入り検査をしていた。
公取委によると、ナカバヤシや共同印刷などの6社が「幹事」役として各社の受注希望を聞き取り、価格や受注予定社を調整。一部の社が落札し、機構に無断で他の社に委託するなどして仕事を分け合い、大規模な談合組織を維持していたという。公取委は主導的役割を担った6社の課徴金を独禁法の規定に基づき5割増やした。
公取委は各社に対し、談合の再発防止に加え、他社と受注に関する情報交換を今後一切行わないよう命じた。こうした内容を排除措置命令に盛り込むのは初めて。1990年代に、機構の前身である旧社会保険庁が発注する入札で、トッパン社の前身の社などによる談合事件があり、再び談合が起きたことを受けて厳しい対応をとった。
「談合通報せず」 理事長に申し入れ
公取委によると、機構には16年1月ごろ、談合の情報が寄せられていた。機構は調査したが、公取委に通報していなかった。機構内の誰がこの判断をしたのかはわからないという。
公取委は実際に談合が起きたことを強く問題視。業者が一堂に会する説明会を入札前に開いていたことも談合を誘発しかねない行為だとして、3日、機構の水島藤一郎理事長を呼び出し、藤本哲也審査局長が対応改善を直接申し入れた。
受注価格は談合の影響で高止まりしていたとみられ、国民の保険料が無駄に使われていたことになる。公取委の立ち入り検査後に開札された20年度発送分のねんきん定期便(20年1月開札)の発注見込み額は約7・5億円で、立ち入り前の19年度分(約17・7億円)から約6割減。21年度分は約4・3億円に減った。
幹事役の6社と課徴金は次の通り。
東洋紙業=3億1686万円▽ナカバヤシ=3億1071万円▽共同印刷=3億505万円▽北越パッケージ(旧ビーエフ&パッケージ)=1億8016万円▽ビー・プロ(宮城)=3362万円▽谷口製作所(茨城)=3292万円
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル