植松敬
静岡県熱海市で7月に発生した大規模土石流で、遺族ら70人が28日、土砂崩落の起点付近にあった盛り土を造成した業者や現在の土地所有者などを相手取り、約32億7千万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こした。土石流について「明確に人災」と主張している。
原告には、遺族のほか、自宅を失った被災者や災害で収入が減った漁師や温泉施設関係者も含まれる。
被告は、2011年まで土地を所有し、盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産業者や同社の幹部、造成の委託を受けた業者、現在の土地所有者など。
訴状によると、盛り土の造成は、適切な排水工事などがされず注意義務違反があったと指摘。その後も盛り土を放置した過失があるとして、土石流が発生した原因自体を盛り土と位置づけて、土石流は人災だと主張している。
原告の一人で「被害者の会」会長をつとめる瀬下雄史さん(53)は、母親を亡くした。「二度と悲惨な災害を起こさないために訴訟に踏み切った」と述べた。
現在の土地所有者の代理人弁護士は取材に「土地所有者は危険な盛り土があるとは知らなかった。訴訟には公明正大に対処する」と話した。盛り土を造成した不動産業者の代理人弁護士は「訴状の内容を確認した上で対応を検討したい」としている。
土石流は7月3日に発生し、26人が死亡、1人が行方不明となった。県と市が原因などを調べている。盛り土の土地の新旧所有者については、重過失致死などの疑いで刑事告訴もされている。(植松敬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル