海外からの帰国時に畜産物を違法に国内に持ち込む日本人の割合は1000人に2人(0・2%)──。農水省動物検疫所が関西国際空港で行った調査で、こうした実態が浮かび上がった。新型コロナウイルスの影響で入国者が激減する中、同空港が事実上、検疫探知犬による“全員調査”状態にあり、日本人の持ち込み実態が明らかとなった。専門家は「日本人の実態を示すデータは非常に珍しい」と話す。
外国人より低率も実数多く啓発必要
16日正午ごろ、関西国際空港では韓国・仁川空港から到着した乗客が降り立った。この便の乗客で入国するのは17人。同日の国際線の飛行機は、同便を含めて2便だけ。通常は1時間に1000人が到着する時間帯だが、閑散としていた。 新型コロナ関連の手続きを終えた乗客は、入国検査場に移り、ターンテーブルを流れる荷物を受け取る。検査場には約5分おきに1人ずつ乗客が現れた。そこへ、荷物を手にした乗客にすかさず駆け寄ったのは「検疫探知犬」だった。「太郎」「三郎」「桜」などが交代で勤務する。「スーク(匂いを嗅いで)」の掛け声を受け、乗客の荷物をくまなく調べ始めた。 検疫探知犬が探すのは、ハムやソーセージなどの畜産物だ。家畜伝染病が侵入する恐れがあるため、個人での畜産物の持ち込みは実質的に認められていない。特に、アフリカ豚熱がアジア各地で猛威を振るう中、警戒感は強まっている。 日本では、入国者に持ち込みの有無を口頭で確認したり、53頭の検疫探知犬が荷物検査したりする。2019年は、同空港で1万件の畜産物の違法持ち込みが見つかった。ただ、膨大な数の入国者を全て調べるのは難しく、どのくらいの入国者が持ち込んでいるのか、全容はよく分かっていない。 現在同空港では「入国者数が限定的で、ほぼ全ての入国者に検疫探知犬を使って荷物検査を実施できている」(同検疫所)。 5月1日から6月10日までの入国者数はちょうど2000人。現状、日本が100を超える国・地域に対して入国拒否を実施していることもあり、国籍は「基本的に全て日本人」(同検疫所)だった。 同期間中の畜産物の持ち込み数は4件(4人で計800グラム)。口頭で発覚したのが2件、検疫探知犬が見つけたのが2件だった。結果、同期間中に帰国した日本人(2000人)のうち、畜産物を違法に持ち込んだ人(4人)の割合は0・2%となった。 日本農業新聞はこれまで、外国人を対象にした調査を実施。昨年5月中旬から同6月上旬にかけて、アフリカ豚熱の発生国から訪れた外国人(202人)に実施した聞き取り調査では、持ち込んだ人の割合は8%に上った。 東京大学大学院、宮崎大学と共同で、訪日中国人(248人)を対象に昨年8月に行った調査では、アフリカ豚熱の侵入源となる豚肉製品について、全体の2・8%が持ち込んだと答えた。今回はこれらを下回った。
畜産物の違法持ち込みに詳しい東京大学大学院の杉浦勝明教授の話
乗客層は平常時と異なると考えられるものの、今回の結果は、日本人による違法持ち込みの実態を示す一定の指標となる。 (過去の調査結果と比べると)持ち込む人の割合は、日本人の方が外国人よりもはるかに低い。今回の結果だけを見れば量も少なく、日本人による家畜伝染病の持ち込みリスクは低いと考えられる。ただ、日本人はそもそも入国者数が多いので、引き続き啓発活動を行う必要はある。
日本農業新聞
Source : 国内 – Yahoo!ニュース