明治神宮外苑は「森」か――。大規模再開発が計画される東京都心の外苑地区を巡り、こんな議論が持ち上がっている。
ユネスコの諮問機関「イコモス」が「100年にわたって形成された森が破壊される」と再開発を批判したのに対し、事業者の一つの三井不動産は「『森』と称されるのは計画全体の約1・7%」という趣旨の書面を公表した。
はたして外苑は森なのか? 再開発をどう考えるべきか?
森林保護学が専門の黒田慶子・神戸大名誉教授に聞いた。
――森はどういった要件で決まるのでしょうか
森とは何か、詳しい決まり事はなく、木がたくさん生えているところを森と呼んできました。誰かがその場所を森だと思えばその人には森なのかもしれません。
森という言葉は研究分野では使わず、「林」を使います。人工林、天然林など、近い言葉は森林となります。
「森は多様な樹木がある」「林は同じサイズの同種の樹木が集まる」といった言説がありますが、当てはまらない例はたくさんあり、正しいとは言えません。
――自然の森というのは多様な樹木が生い茂り、薄暗い所というイメージです
奈良市には千年以上守られてきた約250ヘクタールの樹林がある春日山原始林があります。この写真を見せるとほとんどの人が自然と答えます。こういった場所を森とみる人は多いでしょう。
一方で、京都の日本式庭園を自然と答える人は少ないです。ただ、春日山原始林でも人による管理が入っています。人が造った森はだめということはなく、原始のままならいい森なのかなど、「森」は、簡単に良しあしを判断できるものではありません。
――「森=自然の力でつくられたもの」という認識は根強いように思います
最近は欧米の影響が強いようです。英語での自然は「Wilderness(ワイルドネス)」で、原野、荒野という「Wild(ワイルド)」な状態を保つという意味が強く、そこから木を切るなという主張につながりやすいです。
欧米を含め、先進国のほとんどは高緯度地域です。雑草は茂りにくく、樹木は手入れに力を入れずとも育つ。しかし、日本は熱帯寄りの緯度のため、虫も樹木の病害も多い。維管束植物の種類も日本の方がかなり多いのです。
――そもそも、伐採はよくないことなのですか
記事の後半では、神宮外苑再開発をめぐる問題や都市に「森」をつくるために必要なことについて聞きました。
日本は1千年以上前から山や…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル