僧侶・高橋卓志さん
「終わりましたよ」
今年4月上旬、手術室のベッド上にいた僕は、看護師さんの声で目覚めました。ついさっき「麻酔、入ります」と言われたばかり。実感としてはわずか数秒。実際は4時間半も意識を失っていました。完全なブラックアウトで、夢も見なかった。これは「疑似的な死」といえるのではないか、と僕は考えています。
それより1カ月前に、S状結腸がんが見つかりました。告知後に「どんな病状か」「治療はどうなる?」と想像する時間は、正直ものすごく苦しかった。これまで多くの末期がん患者さんの支援にかかわり、迷いや葛藤、不安、恐怖、悔い、あきらめの言葉に耳を傾けてきました。完治を見込めないなかで手術や治療に臨む姿にも触れ、死に至るまでの厳しさを見せてもらってきた面もあります。
これから僕も同じ道をたどる…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル