昨年10月、町の胃袋を長年支えてきた老舗商店の壁に、色鮮やかな現代アートが描かれた。「ミューラル」と呼ばれ、壁の持ち主の許可を得て描かれるアートだ。
バンクシーで有名な落書きの一種「グラフィティ」と同じルーツを持つが、所有者の許可を得ている分、より大規模に時間をかけて描かれるものが多い。
ビーチや温泉などをそなえ、観光地として有名な和歌山県白浜町の商店「大阪スーパー」を切り盛りする山中和美さん(66)は、話を聞いたとき、場所を提供するか悩んだという。
絵への知見もなく、「壁ももう古いから」。だが、今では「お客さんも楽しんでくれるし、絵目当ての観光客が見えることもある」と目を細める。
ハワイ発のイベントが日本に
山中さんの商店をはじめとした白浜町の各地がミューラルで彩られたきっかけは、毎年全国各地で開かれるミューラルの祭典「JAPAN WALLS」。昨年は同町で開催された。
ハワイ・オアフ島の倉庫街をアートで彩り観光名所へと変貌(へんぼう)させたイベント「WORLDWIDE WALLS」の日本版で、2015年から始まり、これまで東京、大阪や神戸、和歌山などで開催してきた。会場となる街に10人ほどのアーティストを集め、約1週間かけて街角でミューラルを制作してもらう。
制作期間中の街の人とアーティストとの交流もイベントの魅力の一つ。山中さんも「絵を描いてくれた女性との交流は本当に楽しくて、今でもやりとりをしています」と話す。
ハワイでこのイベントの運営に携わったアーティスト、岡本エミリさん(43)が日本に持ち込んだ。
ミューラルを専門とする会社も誕生。その可能性、将来性について聞きました。
街に新たな観光資源を創出す…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル