憧れだった「ガールズケイリン」のプロ選手になって、数カ月が過ぎたころのことだった。
2019年2月、20代の女性競輪選手はいつもと同じように練習場に向かった。
「師匠」と呼ばれる指導役の40代の男性選手にこう言われた。
「セックスばっかりしているから成績が悪いんだろ」
そのころ、女性選手は自己最高成績を更新したばかりだった。
これからどれだけ頑張っても、私は弱いと言われるのかな。そう思うと、絶望的な気持ちになった。
我慢の限界だった。
競輪を志したのは高校3年のとき。もともと別のスポーツに打ち込んでいたが、競輪選手という職業があると父から聞き、説明会に行ったことが転機になった。プロになるまでの道のりなどを詳しく教えてくれたのが、のちに師匠となる男性選手だった。
競輪界には「師弟関係」と呼ばれる文化がある。師匠にあたる先輩選手からトレーニングや選手としての振るまい方などの指導を受ける。知り合いの選手がいなかった女性選手は、この男性選手から指導を受けることになった。
長年スポーツに打ち込んできた女性選手にとって、厳しい練習は苦ではなかった。
師匠となった男性選手は、昼…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル