国土の7割近くを森林が占めながら、安価な外国産材に押され、担い手不足も深刻な日本の林業。近年は従来の手法と豪雨災害との関連も指摘される。森林の適切な管理が求められる中、小規模ながら持続可能なあり方をめざし、防災にもつなげる「自伐林業」に注目が集まっている。
「前方よし! 周囲の状況よし! 退避方向よし!」。昨年12月、福岡県八女市黒木町の標高700メートルの山中。安全を確かめる声が響き、最後のチェーンソーが入ると、樹齢60年、高さ30メートルのスギが傾いた。
福岡県が主催する「自伐林家」の育成研修で修了生が手本を示すと、参加した40~60代の男女10人がその様子を見つめた。講師役のNPO法人「山村塾」理事長小森耕太さん(46)が「木の重心を正確に見定めましたね」と、落ち着いた手さばきをたたえた。
研修会には福岡県内の各地から参加があり、職業も会社員や公務員など多彩な顔ぶれがそろった。郷里に山林を持ちながら放置したままという男性は「先祖の土地を自力で守りたい」。別の男性は「ボランティアとして山の保全を手伝い、地域に貢献しつつ収入も得られる」と将来の夢を語った。
2018年に始まった研修会はこれまでに計27人が修了した。研修生が取り組もうとしているのが、労働力をかけず低コストで森林を管理する自伐林業という手法だ。
林業と言えば従来、生産性を…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル