自民党は24日、参院埼玉選挙区補欠選挙(10月10日告示、27日投開票)への候補者擁立を見送る方向で調整に入った。高い知名度を誇り、無所属での出馬を表明している上田清司前知事(71)との対決は厳しいと判断した。補選で自民党が「不戦敗」となれば極めて異例。補選は10月1日の消費税率10%への引き上げ後初の国政選挙で、今後の政権運営を占う試金石となるが、有権者への選択肢の提示を回避した形となる。
擁立見送りは党埼玉県連が24日に決定した。二階俊博幹事長は同日の記者会見で「県連の意向を尊重したい」と追認する考えを表明した。
県政を4期16年担い、幅広い支持層を持つ上田氏との選挙戦に関し、党本部では「見送りは格好悪いが、勝てる候補がいない」(二階氏側近)と消極的な見方が強い。加えて二階氏と良好な関係を保ち、憲法改正を容認する元衆院議員の上田氏の国政復帰を見越し、安倍晋三首相が宿願とする改憲議論の推進に向け関係を悪化させたくないとの思惑も透ける。
二階氏は記者会見で「上田氏を応援しようと皆で内心思っているから、円満な選挙に導こうとしているのではないかと推察する」とも述べ、「与野党相乗り」も示唆した。
ただ、県連との間には温度差がある。上田氏は8月の県知事選で野党統一候補の大野元裕氏を支援し、勝利に導いた立役者。県連内には主戦論が根強く残り、直前まで県議からの擁立を模索した。県連会長の柴山昌彦前文部科学相は24日、下村博文選対委員長に報告後、記者団に「さまざまな考慮の末、名乗り出る人がいなかった」と強調した。
擁立見送りの背景には公明党との関係もある。自民党が補選に候補を立てて勝利した場合、3年後の参院選は改選数4のうち自民党現職は2人となる。立憲民主党などの野党も複数候補を出せば、1議席確保している公明党の苦戦は避けられない。同党幹部は「3年後に自民党が候補を2人出さないことは約束している」と牽制(けんせい)していた。
最近の補選で自民党が不戦敗となった例は、保守分裂となった平成19年7月の衆院熊本3区補選や、不倫問題で現職が辞職し、擁立を自粛した28年4月の衆院京都3区補選などに限られる。内閣支持率も政党支持率も堅調の中での見送りは、極めて異例となる。
しかも今回は増税後初の国政選挙で、候補者を擁立しなければ、野党などから「逃げた」との批判を受けるのは必至だが、党関係者は「選挙は勝ってなんぼ」との二階氏の持論を踏まえてか、こうつぶやいた。
「候補を出さぬは一度の恥、出したら一生の恥だ」(清宮真一、広池慶一)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース