自治体の農林水産担当職員の減少が止まらない。市町村、都道府県ともに担当職員数(2019年)は15年間で2割以上減っていることが、農水省のまとめで分かった。一般行政職全体は直近で微増の一方、農林水産分野の体制の弱体化が顕著だ。生産現場の課題解決に向けて支援するには、現場に近い自治体の体制強化が欠かせず、職員育成や業務効率化が課題だ。
総務省の調査結果に基づき農水省がまとめた。19年の農林水産担当職員数は、市町村が04年比27%減の3万人。都道府県は同24%減の約5万人。いずれも04年から1万人以上減った。都道府県の普及指導員数は、同33%減の約7200人だった。
一方、一般行政職全体で見ると、市町村、都道府県ともに直近5年間で職員数は微増している。農林水産担当は一貫して減っており、体制の弱体化が進む。
農村振興は、集落ごとの実態や要望を現場に出向いて把握することが欠かせない。農水省は自治体の体制の弱体化で「集落が抱える課題が十分に把握されず、解決に向けた取り組みが行われていない恐れがある」(農村振興局)と懸念する。
こうした状況を踏まえ、同省は、農村政策の在り方を検討する有識者会合を新設。課題解決を担う自治体職員らを育成する仕組みづくりを論点に挙げる。自治体やJA、地域運営組織などの職員らが、地域住民の行動を後押しするという将来像を想定する。
職員数が減る一方、補助金交付のための現地確認や各種調査など、1人当たりの負担は増している。「現場で農家とゆっくり話す時間はなかなか取れない」(自治体関係者)ため、担い手不足など地域の課題に応じた対策を住民と一緒に検討するのも難しい状況だ。
新たな食料・農業・農村基本計画では「行政のデジタルトランスフォーメーションの推進」を打ち出し、行政手続きなどのデジタル化を進める方針。自治体の負担を減らす体制を早急に整えられるかが問われている。
日本農業新聞
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