新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、小中学生らの自然・農村体験を受け入れる自然学校の利用者が減り、見込みより売り上げが21億円減少していることが公益社団法人日本環境教育フォーラムなどの調査で分かった。全国154カ所で経営状況を調査。昨年と比べて売り上げが「半分以上減った」との回答は7割弱に上った。 調査は8、9月に実施。2020年4~9月の見込み額と実際の売り上げを比較したところ合計21億円の減少となった。減少額が3億円を超える事例もあった。調査対象の1件当たり平均減少額は1526万円に上る。 昨年の売上額と比べて減少率が75%以上になった回答者は、全体の33%を占めた。50~75%未満の減少は34%、25~50%未満と25%未満の減少がともに16%だった。同フォーラムによると地域でのコロナの感染リスクに配慮し、受け入れを見送る例も多いという。 自然学校の支援策として同フォーラムは全国75の自然学校と連携し、クラウドファンディングを設立。7月末までに500万円が集まった。需要期の夏の受け入れを中止・縮小した自然学校が多かったため、寄付を追加。10月16日までに500万円を募っており計1000万円の確保を目指す。
完全再開の道を模索 夏のキャンプ中止・延期も…必要とされる日を信じて
小中学生に自然や農村を体験する場を提供する自然学校が存続の危機にひんしている。地域への感染リスクを考慮して受け入れを見送るケースが多く、厳しい経営を強いられている。関連団体がクラウドファンディングで寄付を募るが、事態が改善する見通しはなかなか見えてこない。 長野県泰阜村の山あいのキャンプ場。五右衛門風呂は茂った草に埋もれ、キャンプファイアにも使うために準備していたまきは山積みのまま。毎年夏はNPO法人グリーンウッド自然体験教育センターが企画する小中学生向けのキャンプでにぎわうが、今年は中止になった。 「地元には高齢者が多い。感染リスクを考えると地域外から人を呼ぶことはできなかった」。法人代表の辻英之さん(50)はそう説明する。 例年1000人が訪れる夏のキャンプは法人の収入の半分を占める。大幅な減収は「34年間活動してきた中で、間違いなく一番のピンチ」(辻さん)だ。国の持続化給付金や雇用調整助成金なども活用するが「焼け石に水」という。年末年始は小中学生が地域住民と餅つきや正月飾り作りなどの伝統行事を体験する企画を続けてきたが、今年の開催はまだ決めていない。 辻さんは「コロナ禍で自然に触れることの良さに気付いた人は多い。今後、自然学校の需要は増すはず」と考え、再開に向けて資金調達などに奔走する。 自然学校の再開を望む声は、地域からも出ている。野菜を提供するなどして毎年交流してきた宮島康夫さん(72)は「子どもの元気な声が聞こえなかった今年の夏は、寂しかった。以前のような、にぎやかな夏がまた来てほしい」と願う。 宮崎県五ケ瀬町で小中学生の自然体験を受け入れる認定NPO法人五ケ瀬自然学校も2~7月は、ほとんどのキャンプやイベントを中止・延期。8月からは定員を半分以下にしてキャンプを再開したが、収入は回復していない。 毎年冬は、国内最南端の五ケ瀬ハイランドスキー場でスキーキャンプを開く。今冬は「密」を避けながらの開催方法を探る。「冬も中止となれば経営は相当苦しくなる」と理事長の杉田英治さん(53)。「人数を減らすなどして感染防止を徹底し、延期した行事を開けるようにしたい」と切望する。
ファンドで寄付募る
自然学校を支援するため、公益社団法人日本環境教育フォーラムと全国75の自然学校は、クラウドファンディング「自然学校エイド基金」を設立。1000万円を目標に、16日まで寄付を募っている。1口3000円から受け付け、各自然学校の運転資金や感染防止対策のための費用などに充てる見通しだ。 同フォーラムの加藤超大事務局長は「当面の手当て。経営難を打開するには十分ではない。自然学校がなくなってしまえば、自然や環境を大切に思う人を育てることに支障が出かねない」と指摘。必要に応じて追加の寄付も検討する方針だ。
日本農業新聞
Source : 国内 – Yahoo!ニュース