抗菌薬が効かない薬剤耐性菌によって、2017年に国内で推計8,000人超が亡くなったとする調査結果を、国立国際医療研究センター病院が公表した。薬剤耐性菌による死亡者数の調査は、国内で初めて。特に、フルオロキノロン耐性大腸菌の菌血症による死亡が近年増加しており、早急な対策が求められている。【松村秀士】
調査を実施したのは、同病院のAMR臨床リファレンスセンターと、国立感染症研究所薬剤耐性研究センターの研究チーム。調査では、薬剤耐性菌の中でも検出の頻度が高いとされるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と、フルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)の菌血症による国内の死亡者数を検証した。
その結果、MRSA菌血症による17 年の年間死亡者数は推定4,224人で、11年の推定5,924 人と比べて3割近く減少した。一方、FQREC菌血症による死亡者数は推定3,915人で、11年の推定2,045人と比べて9割近く増えていることが明らかになった。
同病院は、薬剤耐性菌の種類によって増加や減少の傾向が異なることから、その原因を検討し、それぞれの特徴に合わせて対策を行う必要性があるとしている。
薬剤耐性菌については、抗菌薬の不適切な使用などによって世界的に増加している。一方で新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり、国際的に大きな問題となっている。厚生労働省によると、薬剤耐性に対する有効な対策を講じなければ、50年には世界で年間1,000万人が、薬剤耐性菌によって死亡すると推定されている。
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