1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審公判に向けた検察側、弁護側、裁判所による第1回の三者協議が10日、静岡地裁で開かれた。検察側は有罪を主張するか否かの方針を決めるのに「7月10日まで3カ月必要」という考えを示した。弁護団が明らかにした。
弁護団によると、検察側の意向を地裁は了承したという。検察内には、証拠捏造(ねつぞう)の可能性にまで言及して再審を認めた東京高裁決定をそのまま受け入れられないとの考えもあり、検討に時間をかけるとみられる。
「一刻も早く死刑囚の地位から解放を」
一方、弁護団はこの日提出した意見書で、「一刻も早い無罪判決を得て死刑囚の地位から解放させる」ことが再審公判の目的だとして、検察に有罪立証しないよう求めた。審理は1日で終えるよう要請し、検察には無罪論告と謝罪も求めた。
検察が立証方針を保留したことで、公判開始の見通しが立たない状態がしばらく続く。西嶋勝彦弁護団長は三者協議後の会見で「誠に心外。有罪立証はとてもできない」と批判した。
再審開始には「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」が必要と定められており、再審開始が確定した時点で袴田さんの無罪はほぼ確実になっている。それでもなお検察が公判で有罪主張を維持するかが焦点になる。
弁護団は、再審公判での袴田さんの出廷を免除するようにも地裁に求めた。
通常の刑事裁判の一審では、被告が出廷しないと原則開廷できない。被告は起訴内容への認否を述べた上で検察側の冒頭陳述を聞き、質問を受ける。精神障害によって善悪の判断や意思決定ができない「心神喪失」状態の場合は、こうしたやり取りが難しいため、公判停止などの措置がとられる。
袴田さん、「心神喪失」と言えるか
一方、再審公判について刑事訴訟法は、「死亡者や回復の見込みがない心神喪失者」の公判は被告が出廷しなくても審理でき、停止する必要はないと定める。
袴田さんは47年超の拘禁生…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル