軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして逮捕、起訴され、その後起訴が取り消された「大川原化工機」(横浜市)の社長らが、国と東京都に計約5億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁(桃崎剛裁判長)であった。判決は「必要な捜査を尽くさなかった」として逮捕、起訴を違法と認め、国と東京都に計約1億6千万円の賠償を命じた。
警察の逮捕に加え、検察官の起訴を違法とした判決について、刑事司法に詳しいジャーナリストの江川紹子さんに聞いた。
◇
警視庁公安部は見立てを裏付ける証拠がないのに、立ち止まろうとしなかった。裁判で現職警察官から事件について「捏造(ねつぞう)」などという言葉が出るのは前代未聞のこと。部内でも反対意見は多かったのではないか。組織や幹部はこれらの意見を蹴っ飛ばしていたのだろう。
(1995年発生の)警察庁長官銃撃事件の捜査でも、公安部は具体的な証拠もないのにオウム真理教の犯行説にこだわったあげく、未解決のまま公訴時効を迎えた。にもかかわらず、「オウムの犯行」と公表し、オウムの後継団体から訴えられた。敗訴して賠償金を払うことになったが、その原資は税金だ。
本来はこの時に学習するべきだった。無理筋でも、組織や組織の幹部が当初の筋書きにこだわり続け、証拠や人権を無視して突っ走る。今回の事件の構図と似ており、同じことを繰り返している印象だ。
外部の目を入れて検証しなければ、同じようなことがまた起きる。単純に「警察が失敗しました」で終わるわけではなく、誰かが逮捕されるなどの犠牲を伴う。控訴して争い続けるのではなく、非を認め、どうしてこういうことになったのか検証をするべきだ。
「身柄拘束の見直しを」裁判所の責任も
警視庁公安部や起訴した検察…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル