四つの市民襲撃事件に関与したとして、殺人罪などで一審・福岡地裁で死刑判決を受けた特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)のトップで総裁の野村悟被告(76)の控訴審が13日、福岡高裁で始まった。弁護側は「有罪認定の直接証拠が全くないにもかかわらず、『推認』に『推認』を重ねている」などと一審判決を批判、検察側は控訴棄却を求めた。
工藤会トップの裁判で、高裁では厳重な警備態勢がとられた。
午前8時10分、58席の傍聴席を求めた抽選には、385人が並んだ。
午前9時ごろ、野村、田上不美夫(67)両被告を乗せた車両が福岡拘置所(福岡市早良区)を出発した。県警の車両に護衛されながら、計6台の車列をつくり、20分後、福岡高裁(同市中央区)に入っていった。上空には、県警のヘリコプターも飛び、警戒にあたった。
一審で無期懲役の判決を受けたナンバー2で会長の田上被告とともに、午前9時55分ごろ、法廷に入った。
2人とも上下黒のスーツを着用。野村被告は、入廷した際、裁判長に頭を下げた。
開廷前、裁判長に補聴器の調子を確認され、「聞こえづらい」と伝えると、自身が用意した補聴器を右耳に装着した。裁判長から「私の声が聞こえますか」と尋ねられ、「聞こえます」と答えた。
午前10時に開廷すると、裁判長に本人確認のために名前を聞かれた野村被告は「野村悟です」と答えた。
その後、弁護側は控訴審での主張の要旨を読み上げた。冒頭では「有罪認定の直接証拠が全くないにもかかわらず、『推認』に『推認』を重ねている」「客観性を欠落させた、理屈だけの判決だ」と一審判決を批判した。
その上で、1998年に元漁協組合長が射殺された事件については、「組織によるものではなく、被害者に個人的な怨恨(えんこん)を抱く別の組員が首謀したものだ」と説明し、両被告の関与を改めて否定した。
さらに、2012年の元福岡県警警部銃撃事件については、「会ナンバー3の組員が、独断で計画や指示をした。両被告は関与していない」と主張した。ナンバー3の菊地敬吾被告=一審で無期懲役判決、控訴中=は、自らの裁判では関与を否定していた。
一方、残りの二つの市民刺傷事件について弁護側は、田上被告がこれまでの主張をひるがえし関与を認める、とした。
田上被告が個人的な確執や怒りから犯行を指示したと説明。その際に田上被告が野村被告に許可を得る必要はなく、むしろ相談すれば共犯に巻き込むことになると考えたと説明し、野村被告の関与がないことを強調した。
検察側は、「一審の判決に事実誤認はなく、常識にかなっている」と指摘。田上被告が主張をひるがえしたことについては「田上被告には野村被告の刑事責任を免れさせようとする動機があり、信用できない」と断じて、控訴棄却を求めた。
検察官の証拠調べ請求、野村被告が発言
裁判所は弁護側が提出した約…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル