布田一樹、加治隼人
国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、堤防排水門の開門を強制しないよう国が求めた訴訟の差し戻し審が28日、福岡高裁(岩木宰裁判長)であった。高裁は進行協議で、和解に向けた話し合いを提案し、6月2日までに検討するよう求めた。
漁業者側の弁護団が記者会見して明らかにした。弁護団によると、高裁は「国が相反する義務を負う事態が長期にわたり継続し、問題を複雑かつ深刻化している」と指摘。「話し合いによる解決のほかに方法はない」として、和解協議を提案したという。さらに国に対しては、「国民の利害調整を行う職責を有する国の、これまで以上の尽力が不可欠」とも求めた。
漁業者側弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は「極めて説得力のある内容。ここまで踏み込んでいただいたことに感謝する」と評価。今後も開門を主張するが、前提条件なしでの和解協議には応じる意向を示した。
一方、国側も会見し、和解協議について「コメントは差し控える」としつつ、「開門は事実上困難。基金による和解で解決するのがベスト」とあくまで開門しない前提を崩さない姿勢を強調した。
諫早湾干拓事業をめぐっては、差し戻し前の福岡高裁の訴訟と、干拓地の営農者らが国に開門しないよう求めた長崎地裁の訴訟で和解協議に入ったが、いずれも決裂している。(布田一樹、加治隼人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル