作家の室井佑月さん(49)はこの夏、乳がんの手術を受けました。「美」の象徴だと考えていた豊かな胸を失い、感じたこととは?「愚かだった」と振り返る過去の自分への思いとともにうかがいました。
「うそでしょ」
乳がんが分かったのは7月のこと。ひょんなことがきっかけでした。久しぶりに会った友だちと食事をして帰宅し、お風呂に入ろうと、バスタブにお湯を入れたつもりでした。栓がちょっと開いていてお湯がたまっていなかったんです。
化粧を落とし、洋服も脱いでいたので、手持ち無沙汰になってしまって、ふとその夜、友だちの知り合いが、がんで亡くなった話を思い出したんです。
自分で胸を触ってみると、右胸にしこりがあるような感じがしたのです。
すぐに近くに住む友だちに電話をして、「ちょっとしこりがあるっぽいのよ」と話をしました。その日は日曜だったのですが、「月曜日の朝一番で絶対に病院へ行くように。行かないと絶交する」と言われました。いつもはくだらないことを話し合う友だちで、ボケーッとした感じの人なのだけれど、その時はとても怖かった。
私は、10年ほど前に膵臓(すいぞう)に腫瘍(しゅよう)が見つかって、膵臓をとる手術をしています。その影響もあって糖尿病になり、治療のため病院に通っていました。同じ病院の方がいいだろうと、その病院の乳腺外科を月曜日に受診しました。
触診した医師はすぐに「乳がんだと思う」と言いました。まずは「うそでしょ」と。女性の十数人に1人は乳がんになると聞いたことはあったけれど、私は膵臓もとっているし、「おかしくね?」と思いましたね。
豊かな胸こそ美、だった20代
レースクイーンをやっていた若…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル