山岸玲
気象庁は17日から、短時間で集中的な豪雨をもたらす「線状降水帯」の発生を伝える情報の発表を始める。予報ではなく発生情報なので、発表時には土砂災害や河川の氾濫(はんらん)などの危険が迫っている可能性が高く、住民に身を守る行動を促す効果が期待される。
新設されたのは「顕著な大雨に関する情報」で、雨量や雨域が発表基準を満たすと、警報・注意報と同じく各都道府県を「南部」「北部」など複数の地方に分けた単位で発表する。気象庁ホームページで表示するほか、速報に用いる報道機関もある。運用開始は17日午後1時からで、年10~20事例程度の発表を想定している。
線状降水帯は、積乱雲が次々とできて帯状に連なり、数時間にわたって同じ場所に豪雨をもたらす。2017年の九州北部豪雨や、20年7月に熊本・球磨川が氾濫した熊本豪雨の要因となった。気象庁によると、新設情報の公表基準を熊本豪雨時の雨の降り方に当てはめてみると、球磨川で最初に氾濫発生情報が出た約3時間前には発表できた計算になるという。
気象庁の長谷川直之長官は16日の定例会見で「この情報が出る時はすでに避難指示などが出ていると思う。もし避難するか迷っている方がいれば一刻も早く避難を決断し、避難所に向かうのが危険であれば(近所の高い建物への移動などの)命を守る最善の行動を」と呼びかけた。また、線状降水帯が発生すると、災害発生の危険度が急速に高まるため、「住民だけでなく、自治体も避難情報の判断を早め早めにお願いしたい」とした。
いまの気象庁の技術では、線状降水帯発生の予報を出すのは難しいが、海上観測や気象レーダーの強化などで、来年度には半日後の発生確率を出せるようにする計画だという。(山岸玲)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル