海底炭鉱として栄えた長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)の姿を伝える昭和30年放送のNHK番組について、元島民らが実態と異なるとしてNHK側に検証を求めている。韓国メディアなどに朝鮮半島出身者への過酷な戦時労働を強いた証拠として引用され、架空の“負のイメージ”が拡散されることへの強い危機感がある。 映像は昭和30年11月17日午後7時10分にNHK総合で放送された「緑なき島」。軍艦島を舞台に本土から運ばれた野菜を買い求める割烹(かっぽう)着姿の女性や、ボールやめんこで遊ぶ子供らの様子をとらえている。 元島民らが問題視しているのは坑内の映像で、作業員が褌姿でつるはしをふるっている。裸電球で照らされた坑内は天井が低く、四つん這いになって進む姿も映っている。ヘルメットに照明灯はついていない。 軍艦島の近現代史に詳しい一般財団法人「産業遺産国民会議」などによると、端島炭坑では裸での作業が事実上禁じられていたという。また、当時、つるはしは使われておらず、坑内の高さも1・5メートルが確保され、はいつくばる必要もなかったとしている。さらに、坑内はガス爆発を防ぐため特殊な照明器具が設置され、ヘルメットには照明灯の装着が義務付けられていたという。 元島民約10人は10月下旬、都内で「緑なき島」の映像を確認。放送当時はテレビが普及しておらず、ほぼ全員が初めて映像を見たが、坑内のシーンに違和感を覚えたため、元島民らは11月20日付でNHKに「緑なき島」の検証を求める文書を通知した。 当時、端島炭坑に勤務していた担当した小林輝彦さん(85)=茨城県在住=は産経新聞の取材に「坑内の状況は全然違う。裸でかがんだ(石炭の)採り方は考えられない」と語った。 「緑なき島」の映像は、韓国のメディアにより、韓国側が主張する軍艦島での「奴隷労働」の傍証として使われている。釜山の「国立日帝強制動員歴史館」でも展示された。 戦時中に軍艦島で暮らしたという韓国人らは「うつぶせで掘るしかない狭さ」(徐正雨氏、平成11年1月22日付朝日新聞)、「常にふんどし姿でつるはしを振っていた」(崔璋燮氏、23年2月12日付読売新聞)と証言しており、映像の影響の有無が注目されている。 炭坑史に詳しい九州大の三輪宗弘教授(経営史)は「端島炭坑では最先端の技術が常に採用されてきた。落盤事故の多い坑道で、裸で作業することなどありえない。戦時中も同様だ」と語る。 NHK広報局は産経新聞の取材に対し、「作品は当時の取材に基づいて制作・放送したものと考えている」と回答した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース