事件に関与したり巻き込まれたりした外国人に対する事情聴取や取り調べに必要な通訳人を確保しようと、全国の各地検と支部計237カ所で来年度から、遠隔通訳システムの運用を始めることが28日、明らかになった。検察の捜査現場では少数言語を中心に通訳人が全国的に不足しており、遠隔通訳システムの導入は大きな武器となりうる。専門家は「ハード面の整備は一歩進むが、質の向上や養成の仕組みをつくることも重要」と指摘する。
■「電話し続けて、夕方ようやく…」
「前日に打診して翌日来てもらうことが多い。一日中電話し続け、夕方にようやく確保できて胸をなで下ろしたこともある」。1日に20~30件の通訳を依頼するという東京地検の関係者は実情をこう明かす。
同地検によると、平成24年以降、通訳人の依頼件数は年1千件ペースで増加し、30年は約1万2千件に上った。関係者は「現状は捜査に支障を来していないが、近い将来、賄えなくなるのではないかという危機感はある」と話す。
外国人の入国者数(法務省まとめ)は23年の約713万人から30年の約3010万人と約4倍に増加。在留外国人は30年末時点で約273万人で過去最多を4年連続で更新した。
■東南アジア系母語…確保難しく
一方で通訳人の確保は進んでいない。検察では警察の捜査から独立性を保つため、なるべく通訳人を別々に確保する必要がある。ときには長時間に及ぶ取り調べなどに立ち会う精神的負担は大きい上、「通訳料は1時間4千円くらいが相場。急な呼び出しなどを考えると実感として割に合わない」(関係者)とされる。
近年はベトナム人をはじめとする東南アジア系の入国者が増え、英語や中国語といった主要言語よりベトナム語など少数言語の依頼件数が増える傾向にある。しかし、これら少数言語を母語とする通訳人は需要の多い都市部を中心に確保が困難になっているという。
■先進国で唯一、要請の仕組みなし
刑事裁判で通訳を担う法廷通訳人も同様で、最高裁によると、全国の裁判所に登録された人数は21年の4066人から30年には3788人に減少した。
危機感を強めた民間では青山学院大と東京外国語大が共同で、今年4月からベトナム語など3言語で「司法通訳」の養成講座を開講。日本司法通訳士連合会(東京)は、年内にも民間資格として司法通訳士の認定試験を始める。
しかし、現状では通訳人には公的資格がない。東京外大大学院の内藤稔准教授(43)は「日本は先進国で唯一、司法に特化した通訳人の確固たる養成の仕組みがない。質の向上も大きな課題だ」と話した。(市岡豊大)
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