「ネコの時代」といわれる。だが人間はネコの「心」について多くを知らない。身近すぎて研究の対象にはなりにくく、科学的にまだまだ不明な点が多いのだそうだ。そもそもネコって本当に「気まま」なのか? それは人間の思い込み? 麻布大学特別研究員の高木佐保さんに、最新のネコ研究の成果を聞いた。
たかぎ・さほ
1991年生まれ。専門は比較認知学。ネコの認知を心理学的手法で調べる。「ネコが思い出を持つこと」「音で物の位置を確認すること」の研究で2017年京都大学総長賞受賞。著書に「知りたい!ネコごころ」など。
――「飼い主の存在も意に介さず、気まま」というのがネコのイメージですが。
「ネコを調査していて、最近そうとも言えないネコが増えている実感はありますが、研究結果でも、その基本的な像が変わることはありません。ただ、飼い主を気にかけておらず求めるときだけいてくれればいい、というほど勝手な感じではなく、実際にはネコなりに飼い主の存在を意識していることがわかってきました」
――どんな実験をすれば「飼い主を気にかけている」と言えるのでしょうか。
「心理学用語でいう『期待違反法』を使った実験をするのです」
――「期待違反法」とは?
「マジシャンの手品を想像してください。絶対に右手の中にあるはずの千円札が、いざ手を開いたら左手から、しかも1万円が出てきたらびっくりしますよね。期待(推理)と違う事態が起きると、人間は普通より長くじっとそれを見る習性があります」
「この心理学の方法を使うと、例えば言葉を話さない乳児が『1+1=2』を理解できているか調べられます。これは動物でも同じなのです。1、2秒でも見る時間が長ければ、その理由は『期待(推理)』と違うからだとなり、何を推理していたかわかります」
――具体的にはどういう実験から?
「ごく簡単に言いますと、室内にいるネコに、室外から飼い主の声をスピーカーで5回流し、間髪を入れず、同じ飼い主の声をそこから4メートル離れた室内に設置したスピーカーから流します。すると、多くのネコがびっくりした様子を見せたのです」
――なぜびっくりするのですか。
研究対象になりにくかったネコは、その認知能力が低く見積もられていた、と高木さんは話します。そして記事の後半では、人間と暮らす中でネコが進化し、あの動物にどんどん似てくる可能性がある、というのです。
「飼い主がいるはずがない場…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル