大阪府大阪狭山市で今月17日、89歳の男が運転する車が暴走し、1人が死亡、2人が重傷を負った。高齢者が運転免許を自主返納する動きは広がっているものの、悲惨な事故は後を絶たない。社会全体で安全性を高めていくにはどうすればいいか。
「とっさの反応できす」 返納を決断
「本当にお気の毒に」。事故が起きた大阪狭山市のスーパー敷地。事故2日後の19日、市内の男性(80)は現場に手向けられた花束を前に手を合わせた。
男性は「高齢者の事故が起きるたびに運転免許の返納を考える」と話す。17日はちょうど、更新に必要な高齢者講習を受けていた。認知機能検査でも「記憶力・判断力に心配がない」と判定されたという。
ただ、現場周辺は丘陵地のニュータウンで坂が多い。「一人暮らしで運転を頼める人が誰もいない。通院や買い物を考えると(運転をやめるのは)難しい」
近くに住む別の男性(89)は9年前に免許を返納した。前日に物損事故を起こし、「とっさの反応ができなくなった」と痛感したからだという。
不便なのは確かだ。年を重ね、用事で10分余り歩くことや駅の階段の上り下りが「これほどしんどいとは思わなかった」。それでも「事故を起こしてからでは遅い」と考える。
暴走した車を運転していた男は自動車運転死傷処罰法違反容疑で府警に逮捕され、送検後に釈放された。府警に対し、妻(90)の買い物に付き添っており、「ブレーキとアクセルを踏み間違えて慌てた」などと話したという。
捜査関係者によると、男は過去5年間無事故・無違反で、直近の免許更新時にも認知機能に問題がないと判定されていた。男の友人は「足が悪い奥さんを病院にも送迎していた。以前から『事故を起こす前に運転をやめないと』と話していたが、踏ん切りがつかなかったのかも」と話す。
一方、死亡した岡田博行さん(87)の親族によると、岡田さんは車とバイクの運転免許を返納していた。事故の日は家族に病院まで車で送ってもらい、「帰りはひとりで(現場近くの)銀行に寄る」と話していたという。
岡田さんの知人は「地元のボランティア活動に熱心だった。死を無駄にしないような対策を(国などに)望みたい」と話した。
来年から新制度 免許更新できない人も
社会の高齢化が進み、高齢ドライバーは増加の一途だ。警察庁によると、75歳以上の運転免許保有者は昨年時点で590万4686人で全体の7・2%。80歳以上は242万7491人で、10年前の1・8倍だ。
1998年に導入された免許…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル