関西電力経営幹部らによる金品受領の責任をとって経営陣が引責辞任した問題が、経済界にも波紋を広げている。退陣した八木誠前会長(69)は、関西経済連合会の副会長職も辞任。関経連は当面、副会長が1人少ない体制を余儀なくされる。関西では2025(令和7)年大阪・関西万博というビッグイベントを控える中、財界活動の牽引(けんいん)役が表舞台から去る緊急事態に陥った。
■抜けた穴は埋めず
「関電が今後どのように社会貢献をするのか。関電が決めることだが、(財界活動に)協力はいただけると思っている」
関経連の松本正義会長(住友電気工業会長)は11日に京都市内で開かれた記者会見で、八木氏の副会長辞任の影響を問われ、こう答えた。関電が財界の要職から離れるのは極めて異例だが、企業として財界活動への協力を継続するよう呼びかけたものだ。
関電は過去に4人の関経連会長を輩出。事務局への職員派遣などでも貢献してきた。八木氏は平成29年5月に関経連副会長に就任。会長は副会長から昇格する慣例があり、八木氏は松本氏の後任の有力候補と目されてきた。
関電が金品受領問題を公表した当初、八木氏は関電会長を続投する姿勢を示したが、批判は高まる一方で、結局、9日午後の記者会見で辞任を発表した。その直前の同日午前、「財界にもご迷惑をおかけする」と関経連副会長を退く意向を電話で直接、松本会長に伝えた。辞任を予想していた松本氏は、詳しい経緯は聞かずに了承したという。
関経連副会長は13人いたが、当面は八木氏の抜けた穴を埋めず12人体制で活動していく。
■「新体制で判断を」
最も影響が懸念されるのは、万博に向けた寄付金集めだ。約1250億円と試算される会場建設費を国、大阪府・市、民間で3分の1ずつ負担する計画で、民間の負担分は約400億円。このうち関西経済界は200億円の寄付金集めを目指しており、関電には15億円の寄付が期待されていた。
関電の岩根茂樹社長はこれまで「万博には積極的に協力していく」と前向きだった。しかし、金品受領問題を受けて9日、第三者委員会の調査報告を待って辞任すると発表。記者会見では、関電の万博への関わり方について「新しい経営体制で判断してほしい。私が申し上げる立場にない」と述べるなど、先行きには不透明感も出てきた。
松本氏は「八木さんに抜けられて痛いが、万博推進は他の副会長と一丸になって全力で取り組んでいく。悲観的には思っていない」と強調。大きな推進力を欠いた緊急事態を力を合わせて乗り切る構えを見せた。(安田奈緒美)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース