神戸市東灘区の六甲アイランド南沖で埋め立てが進む人工島で、同市が大規模コンテナターミナルを10年以内に一部整備する方向で検討していることが15日、分かった。今年前半にもこの内容を含む中期計画を示す見通し。人工島でのターミナル整備計画は、阪神大震災後の市の財政難で凍結されていたが、震災25年の節目を機に解除する方針。市は「中国や韓国などの港湾施設が台頭する中、国際的な地位を取り戻したい」としている。(木下未希)
整備計画は、神戸港のコンテナ取扱量が昭和51、52年に世界2位となり、さらなる取扱量増加が見込まれることから始まった。平成6年には取扱量が過去最高の292万個を記録したが、翌7年に震災が発生。岸壁の沈下やクレーン倒壊などに見舞われ、取扱量も半減した。震災後の市の財政難もあって13年に計画はいったん凍結された。
神戸開港150年を迎えた29年、市の諮問機関「神戸港港湾審議会」が30年後の神戸港の将来構想として改めて提示。人工島の土地333ヘクタールに流通から製造までを1カ所で担う全国初のターミナルを目指す内容で、学識経験者らでつくる研究会が、構想をより具体化させた中期計画の策定を進めてきた。
関係者によると、中期計画では、今後10年後までに人工島の埋め立てが進んだ部分に大規模ターミナルを一部整備した上、荷役を効率的に行うためAI(人工知能)を導入。平成30年の台風21号の被害を踏まえて高波や津波など災害に強い港湾施設を目指し、岸壁背後をかさ上げする方針が盛り込まれる見通しという。
中期計画は早ければ今年前半にもパブリックコメントなどを経た後、同審議会の答申を得て市が進めるとみられる。全体の完成は30年後がめどだが、凍結前に想定した整備費は総額約5600億円。今後の計画に合わせて見直す可能性が高いが、数千億円規模の公金投入が想定されることに議論を呼びそうだ。
現在の神戸港のコンテナ取扱量は平成29年に震災前を上回り、翌30年は294万個を記録。東京港や横浜港に次ぐ全国3位だが、政府が国際コンテナ戦略港湾に指定する「阪神港」をともに構成する大阪港より取扱量は50万個以上多い。
ただ、海外港間のコンテナ積み替えが取扱量全体の1%程度にとどまり、「国際ハブ港」として躍進する韓国・釜山(プサン)港との差を埋めるには、国際競争力を持つ港湾インフラの整備が不可欠。神戸港には11カ所のコンテナターミナルが分散しているが、近年はコンテナ船の大型化などで運航コストを下げる流れが業界の主流で、港湾関係者は「分散したコンテナターミナルを再編、拡張していかなければならない」と指摘する。
久元喜造市長は取材に「神戸港が中長期的に発展するには、ターミナルを増設していく必要がある」と強調しており、市の担当者も「震災25年の節目に出される中期計画に基づき、ミナト神戸の復権に取り組みたい」と話している。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース