離婚した後に、子どもをどう育てていくのか。日本では父母のどちらかが親権を持つが、父母の双方で親権を持つ「共同親権」を求める声もあり、法制審議会で議論が始まっている。離婚の影響を受ける子は毎年20万人以上。「子どもの利益」という観点から異なる立場の専門家2人に聞き、考えたい。
共同親権制 本当に子どもの利益か 小川富之さん(家族法学者)
――離婚後の子どもの養育をめぐっては、数年前に「親子断絶防止法案」の国会提出の動きがあるなど、最近は「共同親権」や「面会交流の促進」を求める声が出ています。こうした動きをどう見ていますか。
「私は離婚後の父母が子どもの養育にかかわることには賛成の立場です。別居親と子どもとの面会交流についても、同居親と協調・協力して、子どもの健全な成育につながる形で実施することは重要だと考えます」
「ただ共同親権導入を求める声の根底には、現在の単独親権制では面会交流が制限されており、共同親権制になれば面会交流が促進され、子どもの健全な育成につながるとの考えがある。夫婦関係は解消しても親子関係は継続すべきだというものです。耳に心地よい言葉ですが、本当にそうでしょうか。離婚後の親子のかかわりの継続が常に子どものために有益であるということは実証されていません」
――共同親権制になった場合、どんな点が変わりますか。
「日本では離婚の88%は離婚届を出すだけの協議離婚で、これ以外の、話し合いではうまくいかない、高葛藤を抱えたケースに家庭裁判所がかかわっています。離婚全体で84%、家裁で離婚が成立したケースで約9割は母親が親権者になっています」
離婚後の親子の交流をどう保証するか、小川富之さんの論は続きます。記事の後半では、小川さんとは「子どもの利益」の観点で立場が異なる臨床心理士の小田切紀子さんに、日本の現行制度に何が足りないのかを聞いています。
「共同親権制になると、離婚…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル