日本側は、韓国によるWTO提訴の動きについて「そもそも安全保障上の輸出管理であり貿易制限ではない」(政府高官)と静観するが、審理が韓国に有利に働く可能性もあり、周到な外交戦略が求められる。
輸出管理をめぐっては、韓国政府が12日、日本がホワイト国からの韓国除外を2日に閣議決定したことに対抗し、日本のホワイト国除外を決めた。韓国は日本の不当性を訴えながら同様の措置をとり、一見、韓国がWTOに提訴しても合理性に欠ける印象がある。
だが、WTOに詳しい横浜国立大の荒木一郎教授は「WTOは韓国の訴えを受けて日本の措置を審査するだけで、韓国の対抗措置は一切考慮しない」と話す。
また、WTOの紛争解決手続きの仕組み上、韓国が提訴した後で日本が同じ趣旨で申し立てることは難しい。世耕弘成経済産業相は28日、記者団に「韓国の動きはまだ見えていない。どういう形で提訴するのか考え方を伺いたい」と述べたが、韓国が事前に手の内を明かすことは考えにくい。
軍事転用の恐れなどの問題がある物資を規制することは、関税貿易一般協定(GATT)21条で例外規定として認められている。実際、ウクライナが輸出品の通過ルートを制限するのは違反としてロシアを提訴した案件で、WTOは4月、クリミア紛争を背景に安保上の正当な対応としたロシアの訴えを認めた。
ただ、現在審理中のトランプ米政権による米通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウムの追加関税をめぐる提訴では「クリミア紛争に比べて安保上の理由は弱い」(関係者)などとして米国の主張が退けられる可能性がある。韓国が提訴した場合、審理はこの後になる見通しで、日本に逆風となるおそれもある。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース