一度気になり始めるとそこから注意を逸らすのが難しい
家族は、疳(かん)の強い末っ子に手を焼いていました。覚えているのは、パースの映画館で大量のイカが出てくる映画を見ている時に外に出たくて泣き喚いたこと、レストランで帰りたくて泣きながら子ども用の椅子ごとひっくり返ったこと。不快感を覚えると我慢することができず、とにかくその状況から逃れたくて泣いたり声をあげたりしてしまうのです。 以前も述べたように、それがADHDのせいなのか、私の気質のせいなのか、たまたまそんな体調だっただけなのかはわかりません。子どもなんて多かれ少なかれみんなそんなものだと思いますが、家族が口を揃えてあれは酷かったというのだから、度を越していたのでしょう。自分が子育てをしてみたら、改めて親の苦労がわかりました。 なぜイカ映画が嫌だったのか。生き物の映像を見るのは好きでした。ただあの時は、暗いところで黙ってじっとしている気分ではなかったのです。そして画面が遠かった。イカと私の間に人の頭がたくさん見えて、気になってしまう。家族は楽しんでいたようだったので、悪いなあと思いました。でも堪えることはできませんでした。嫌となったら、嫌なのです。 大人になってからも、どうも自分は、映画館や劇場でなぜかものすごく座高の高い人や、上演中にレジ袋をガサガサやる人の後ろに座る宿命に生まれついたようだな!と思っていたのですが、もしかしたら物音に敏感で人一倍気が散りやすいからそう感じるのかもしれません。物音に敏感であることは声を使う仕事には非常に役に立っているので悪いことではありません。 ただ、何かの音が一度気になり始めるとそこから注意を逸らすのが難しいため、集中力を維持するのにかなりエネルギーを使います。例えば言葉と言葉の間に歯の隙間から「スッ」と息を吸う癖のある人や、会議中にペンをカチカチする癖のある人などがいると、「スッ」と「カチカチ」にフォーカスしてしまい、非常にイライラします。頭の中で無理やりその音を消して話に集中するように努力しなくてはならないので、とても疲れるのです。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース