11日の自民党役員人事・内閣改造で最大の焦点だった幹事長ポストは、二階俊博氏が続投する方向となった。二階氏に対しては、政治手腕を評価する声がある一方、就任から3年を超え、80歳と高齢であることを不安視する向きもあった。安倍晋三首相(党総裁)も後進の育成のため、一時は二階氏の交代も検討したが、党運営の安定を優先した。
「ありがとう。またよろしくね」
4日午後、自民党本部4階の幹事長室。テレビで「二階氏留任で調整」の一報が流れると、周囲から「おめでとうございます」と祝福された二階氏は、はにかんだような表情でこう応じた。
■党内から交代論も
前日の3日朝、二階氏は党本部で約10分間、首相と2人きりで向き合い、人事について意見交換したとみられる。その後、記者会見に臨んだ二階氏の表情は気迫に満ちていた。
幹事長は、党運営の事実上のトップで、選挙での候補者の公認や資金配分など絶大な影響力を発揮する。二階氏は幹事長として総裁任期延長の党則改正を主導し、昨年の総裁選での首相連続3選に道を開いた。平成29年の衆院選と先の参院選での自民党勝利にも大きく貢献した。
ただ、自身が率いる二階派(志帥会、46人)に野党出身議員を引き込む強引な拡大路線は反発を招き、党の長老や首相側近らからは「党内を混乱させている」と二階氏の交代論が出ていた。一方、「ポスト安倍」を目指す岸田文雄政調会長は今回の人事で、「首相への登竜門」でもある幹事長就任に意欲を示していた。
首相は、二階氏への恩義と側近らの意見、後継者の育成などのはざまで悩み、周囲にこう漏らしていた。
「二階氏の処遇が最大の悩みどころだね」
実際、麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官は「内閣の重要な柱」として留任が早々に伝えられる一方、マスコミは「二階氏の処遇が焦点」と報じた。当初は今月10日とされていた党役員人事・内閣改造が11日に後ろ倒しにされたのも、二階氏の処遇がなかなか決まらなかったからとされる。
■憲法改正を視野
二階氏もそうした空気を敏感に感じ取り、交代の要因になりかねない「健康不安説」が流されることに神経をとがらせた。
結果的に首相は二階氏の続投を決めた。二階氏と関係を深めている菅氏が、続投を首相に進言したことも大きな後押しとなった。政府高官は「安定して党を支えてもらうということだろう」と首相の意図を読み取る。党関係者は首相が目指す憲法改正を挙げ「二階氏でなければ進まない」と話す。
ただ、今回の人事をめぐって党内の不満が顕在化したのも事実だ。8月に幹事長の連続在職記録を更新し、さらに要職を務めることには「長すぎる」との声も出ている。こうした不満に二階氏自身がどう向き合うかが、今後の党運営の鍵になりそうだ。(大島悠亮、広池慶一)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース