2019年に火災で焼失した首里城(那覇市)の正殿の彫刻に使われた下絵が、金沢市の彫刻作家・今英男(いまひでお)さん(1937~2014)の自宅で約30年ぶりに見つかった。制作過程の注意点や修正点が細かく記されており、関係者は「再建に向けて貴重な資料になる」と話している。
下絵は縦約60センチ、横約4・5メートル。向き合う2頭の「あうん」の竜と、その間に宝の玉「宝珠(ほうじゅ)」が描かれている。「宝珠双龍文様」と呼ばれる図柄の彫刻で、正殿の玉座の背後にある「内法額木(うちのりがくぎ)」(「額木」を「がくき」と読む説もある)と呼ばれる部分に施してあった。
下絵には「全体的に少し上げる」など、手書きの修正点や注意点が複数書き込まれている。
焼失と再建を繰り返した首里城は沖縄戦で破壊された。今回、見つかった下絵は「戦後の復元事業」として1992年に正殿が復元された際に使われたもの。当時、今さんとともに復元事業で首里城の彫刻制作にかかわった琉球大学の西村貞雄名誉教授(78)は「今さんが実際の作業に使ったものに間違いない。残っていたとは驚く」と話す。
復元にあたり、西村さんらは「宝珠双龍文様」の下絵を、戦前の写真などを元に書き起こしたという。「大変な作業だった。実際の作業の跡が分かる下絵は、次に作る人にとって得がたいもの。再建にも必ず役立つ」。沖縄県の特命推進課の担当者も「貴重な資料になる。ありがたい」と話している。
下絵を見つけたのは、今さんの妻の良子さん(74)。金沢市で開催される今さんの資料展(13~28日)のため、自宅にある資料を整理していた2月下旬、家具の隙間から出てきたという。首里城を2回訪れたことがある良子さんは、「お父さんが彫る様子を撮った写真もよく見ていたので、すぐにあの下絵だと分かった」という。
王が座る場という首里城の象徴…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル