ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故が相次いでいることで、踏み間違い防止装置を開発したメーカーへの問い合わせが急増している。アクセル、ブレーキを一体化した「ワンペダル」を製造販売するナルセ機材(熊本県玉名市)には1日100件以上、アクセルを強く踏むとブレーキが働く「STOPペダル」のナンキ工業(埼玉県川口市)には販売会社と合わせ、日に60件以上の電話が入っている。
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従業員11人のナルセ機材は2本の専用回線で対応しているが、「1日100件以上の問い合わせが入り、お取りできない電話もたくさんある」(担当の有瀬智雄さん)状況となっている。アクセルとペダルが一体化したワンペダルは、踏めばブレーキで、アクセルは足を横にずらす。踏めば必ず止まるようにすることで、踏み間違いによる事故を防止する。これまで約900台に取り付けたが、ペダルは車種、年式で形状が違うため、ハンドメードの受注生産。年に100台余りしか作れず「ご依頼を受けても最低4、5カ月待っていただかなくてはいけない」という。
社員2人のナンキ工業が開発したSTOPペダルは、岡山のメーカー、埼玉の販売店と提携し、4月から製造・販売が始まったばかりだ。販売店によると、問い合わせは「ゴールデンウイーク前は1カ月で4、5件だったのが、今は1日40~50件」。300倍になった。STOPペダルはアクセルをベタ踏みすると、ブレーキが働く。踏み間違え、アクセルをさらに強く踏み込むと、ストップする。
国交省によると、新車の衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の搭載は進んでいる。17年の新車販売で、衝突被害軽減ブレーキの搭載率は77・8%、ペダル踏み間違い時加速抑制装置は65・5%となった。しかし、いずれもセンサーで障害物を感知する仕組みで、逆光、雨、夜間など条件によって左右されるほか、作動するのは停止時や低速走行時(時速10キロ以下)だけ。踏み間違えてパニックとなり、さらに踏み込んだときでも有効なのは、今のところ、ワンペダル、STOPペダルだけのようだ。
ナンキ工業の南平次社長(79)は2010年、踏み間違い事故を特集したNHK「クローズアップ現代」を見て、STOPペダルの開発に乗り出した。「あの当時で年間7000件といわれていました。9年たっても変わっていない。これだけ人の命が奪われているのにもう見過ごしているわけにはいかないと思います。何らかの解決策を出さないと、自動車メーカーが訴えられることになると思う」と話す。石井啓一国交相は7日、自動車メーカーに対し、後付けができる踏み間違い対策装置の開発や実用化を進めるよう要請する考えを示している。【中嶋文明】
◆高齢ドライバー事故 ブレーキとアクセルの踏み間違いなど操作ミスが事故の3割を占める。75歳以上の免許証自主返納は昨年、全国で過去最多の29万2089人となった。母子が犠牲になった4月19日の東京・東池袋の87歳男性の事故以降、重大事故が続き、都内の5月の自主返納は5800人で過去最多を更新した。
◆ワンペダル ナルセ機材は海苔(のり)の収穫機など農漁業機器の製造・販売会社だが、鳴瀬益幸社長が約30年前、踏み間違いで怖い思いをしたことをきっかけに開発に乗り出した。取り付け費を含め、約20万円。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース