大雨による静岡県熱海市伊豆山の土石流は、10日で発生から1週間がたった。市は土砂災害への警戒を解いておらず、避難情報のうち最も高い警戒レベル5の「緊急安全確保」を継続している。行方不明者の捜索も続いている。
県は10日、これまで見つかっていた遺体1人の身元について、太田洋子さん(72)=同市伊豆山=と確認されたと発表した。死者9人のうち身元が判明したのは8人目。行方不明者は19人となった。
県などによると、土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川上流部の標高は約400メートル。約2キロ離れた相模湾まで約11度の急勾配を下り、被害は延長約1キロ、幅最大約120メートルに及んだ。住居44戸が押し流され、78戸が全壊・半壊。長期避難にそなえ、公営・民間住宅約100戸で受け入れ準備が進む。
静岡地方気象台は7日、土砂災害警戒情報などを解除した。だが、市は被災地域について「引き続き土砂災害のおそれが極めて高い」として、緊急安全確保を継続。被災地域以外の市内にもレベル3の「高齢者等避難」を継続している。
5日には県東部在住者を対象に市社会福祉協議会が災害ボランティアを募集し、10日午前8時現在3100人が登録。ただ「まだ危険な状況」として活動開始日は決まっていない。
一方、市は同日から、安否不明者を行方不明者として扱うことを明らかにした。「連絡が単に取れないだけでなく、災害に起因して連絡がとれないと判断した」としている。(釆沢嘉高、村野英一)
いつも送迎する家々、手分けして回った
静岡県熱海市をおそった土砂災害の現場で、逃げ遅れそうになった高齢者らを消防団員たちとともに避難させたのは、介護タクシー会社を経営する夫婦だった。どこに、どんな高齢者が住んでいるか日ごろから把握していることが生きた。
「雨、大丈夫かな」
3日朝。伊豆山(いずさん)地区で介護タクシー会社「伊豆おはな」を経営しながら運転手もつとめる河瀬豊さん(51)は、妻の愛美さん(45)と利用者を病院に送った帰り道、不安を覚えた。上流の川が増水した影響で、いつも通る道が通行止めになっていたからだ。
約2時間後、会社に戻る途中…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル