2002年。サッカー・ワールドカップ日韓大会を目前に控えた埼玉スタジアム近くの国道では、車からのごみのポイ捨てが絶えなかった。年末、久しぶりに行くと、以前と同じ残念な光景が広がっていた。
どうしたらポイ捨ては減るのか。そう考えながら取材していると、「効果がある」と県内外の自治体などが導入しているグッズがあると知った。「ごみよけトリー」という、高さ1メートル強の、朱色に塗られた鳥居のような製品。02年にさいたま市で生まれたロングセラーだという。
「ごみよけトリー」は、自治体向けに防鳥ネットやごみ収納ボックスなどを販売する加藤祥司さん(68)が考案した。
仕事で各地の役場を回っていると、あるとき、環境担当部署の職員が少ない日があるのに気づいた。
理由を尋ねると、不法投棄ごみの片付けに回っていると教えられたという。
「ならば環境を商売にする私が何とかしよう、と思ったわけです」
加藤さんはこう考えた。
神社や寺院の敷地にごみが少ないのは、神仏への畏敬(いけい)の念からだろう。それをドライバーたちのモラル向上に生かせないか。
思い浮かんだのは、神社にある鳥居だった。
構造はシンプルで、作りやすそうだと思った。しかし、公的機関は「政教分離」が原則だ。懸念が持たれないよう、もとの形に工夫を加えることにした。
鳥居は2本の横木のうち上の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル